ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.132 "苫米地正樹さんの色" "大類尚子さんの色"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.132 "苫米地正樹さんの色" "大類尚子さんの色"

<2020年2月号>

苫米地正樹さんの色

三重県四日市で作陶する苫米地正樹さん。
通称”べっちー”は、人たらし。愛嬌たっぷり、マメでサービス精神旺盛で誠実。気が付けば人の懐にフッと入っている。
一方、作品は、ビシっとキマった造形に墨色の貫入と鮮やかな色の対比に緊張感さえ感じられます。

べっちーが子どもの頃から好きなターコイズブルーの象徴とも言えるネイティブアメリカン(インディアン)を求めて、
最近、アリゾナのホピ族に会いに行ったのだそう。
フェニックス空港からパワースポットのセドナやルート66にある古い町並みが残るスタッフフラッグなど寄り道をして、
そこを抜けると広大な平原にまっすぐに伸びた道路をただひたすら走っていくと現れるのがメサという侵食された大地。
遠くから見ると山頂が平らな山に見えるメサ、それがホピ族の居留地。
ホピ族の陶器は、手びねりで作り野焼きしたもの。
表面はツルツルの石で撫でて仕上げ、そこに植物や動物の毛で作った筆で模様が描かれる。
また昔から守り続けられている儀式のニーマンカチーナというダンスを観たり、
現地の工芸品などにも触れ、お目当てのカチナドール(精霊の形の木彫人形)も入手でき、大満足の旅だったとか。
壮大な景色と伝統的な文化はとても心に残り、帰国して自分の生まれ育った四日市に何かないかと考えました。
萬古焼きの蚊遣り豚が四日市で生産量が多いことから、最近では知人の陶芸家やアーティストに声をかけて、
あの蚊遣り豚の形をそのままに、独自の個性を生かした作品の展示をするようになりました。
日本にある昔ながらのいろんなものを新しくアレンジして楽しくおもしろく後世に伝えられたらと考えているそうです。
プライベートでは趣味でアート作品を作っていて、それが何かは内緒ですが、気になる方は在廊日にお尋ねくださいね。









大類尚子さんの色

三浦半島の最南端・三崎で”ruinuno”として、ストールを制作する大類尚子さん(以下ルイさん)。
お父様はアートディレクターの大類信さん。
彼の奔放で楽しそうに仕事をされている姿を見ながら育ったルイさん、自ずとアートを目指し東京造形大学に進学。
大学では織や染色などテキスタイルデザインを学ぶ。
ルイさんの卒業制作がある方の眼にとまり、デザイナー三宅一生氏率いる三宅デザイン事務所での勤務を経て独立。

ルイさんのストールは、軽くて薄くて暖かいウールガーゼの生地に、赤や黄色や水色などカラフル。
それらは接着剤も縫い目もないニードルパンチで生地に定着されたモチーフ。
一面に施されたいろんな色のモチーフは、巻き方によって表情を変え楽しくなります。
それらの色遣いは、三崎港の海や夜のネオンからインスピレーションを得るのだとか。
三崎で出会ったいろんなジャンルの人たちはそれぞれが自立し、確固たるアイデンティティを持ち、生き生きとしている。
そんな環境にいるとルイさん自身も刺激を受け、創作意欲が高まるのだと言います。

ルイさんは一見少女のようなキュートな女性なのですが、3人のお子さんの母。
母になる前までは、アーティスティックなモノづくりをしていたのが、母になってからは、どこか気のぬけたやわらかな感じに変化。
今では、日本の希少な技術とコラボし、かつ大人の凛とした、上質に自分らしくまとうストールを目指して作っています。
今回、アート×クラフトなストールやアクセサリーが勢ぞろい。どの色を選びますか?







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