ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.32 "great friends・荒井恵子さん" "幸せ♪二階堂明弘さん"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.32 "great friends・荒井恵子さん" "幸せ♪二階堂明弘さん"

ギャラリーテン  great friends・荒井恵子さん 幸せ♪二階堂明弘さん <2010年10月号>

great friends・荒井恵子さん


◎密着!荒井恵子の創作現場◎

↑まずは墨を磨る

↑真っ白い和紙に最初の一筆

↑数時間後。毛筆から葦の筆に

↑翌日。おっ、進んでる!


↑ちょっと休憩♪

↑細かい描写を。まだまだ続く・・・

荒井恵子さんと彼女の作品との出会いは、7年ほど前。
初めて入ったギャラリーの入口すぐのところで、オーラを放つモノトーンの大作が眼に飛び込んできました。
シゲシゲと見入っていると満面の笑みを浮かべた今より7歳若い(もちろん今と全く変わらない!)荒井さんが現れました。
作品のすばらしさに対する感動と、初めて会った気がしない荒井さんの雰囲気で、一気に惹きつけられました。
それ以降は、なにかしらピタっとウマが合うというか、波長が似ているというか、今ではgreat(偉大)なgreat friends(親友)に。
暇をみつけては、都内の美術館や興味津々な店を巡ったり、車で早朝から深夜まで日帰りで遠出したりします。
ただ、この二人が一度会うと、動画の早回しを観ているかのようにハードにあちらこちらへ動き回る。帰宅時は大概疲れ果てています。
毎回「はぁ、疲れたぁ。でも、行ってよかったよ。おもしろかったねぇ。がんばったねぇ。」と、お互いを労いあう。

私が「○○がおもしろそうなんだけど、行かない?」とメールすると、かなりの高い確率で「OK」と返ってきます。
しかし、荒井さんのB5サイズの大きいスケジュール帳は、どの日も真っ黒になるくらい用件で埋まっています。
その中で貴重な時間を捻出し、ひどい時には都内の○○画廊で待ち合わせして、展示を観てランチしてすぐ解散ということも。
私は一ヶ月のうちの大半は、ダラダラとテレビを観たり、カフェでボーっとしたり、中毒のようにゲームをしたり、ワンコと昼寝したり・・・。
一度荒井さんに「ないだろうけど、暇な時って何してんの?」と聞いてみたら、「本読んでる」と即答。全くダラダラすることがないらしい。 高校球児の息子とかわいい小学生の娘の母でもある荒井さんは、あの多忙の中、野球の試合や学校の行事には頻繁に顔を出す。
そのことには頭が下がる想いがするが、私たちには多くの良し悪しが表裏一体の共通点もあるのです。↓ただし( )内は私の特徴です。
楽天的(能天気)で、おおらか(ガサツ)で、果敢(怖いモノ知らず)で、好奇心旺盛(猪突猛進)で、効率的(テキトー)で、
クレバー(ズル賢い)で、精力的(勢いだけ)で、感受性豊か(感動屋)で、ラフ(だらしない)で、グルメ(食い意地張っている)で、
笑顔(ヘラヘラしている)で、行動的(せっかち)で、柔軟(ノンポリ)で、社交的(馴れ馴れしい)で、おっちゃん(=おっちゃん)で、・・・。    
私は荒井さんが落ち込んだり怒っている姿を一度もみたことがありません。
いつもニコニコ顔でゲンキで穏やかで精神が安定していて、高らかな声で笑っている。
苦難がないわけではないが、「どうにかなるよ〜」とか「まぁ、いいかぁ」、あるいは勇敢に立ち向かう。
潔くて清々しく晴れやかで、気持ちがよい。

しばしば二人でいろんな話をするのですが、今回、初めて作品の制作過程を見せてもらいながら、創作についてじっくり伺いました。
昔から茶道を嗜む環境の中で、“墨”は自然と彼女の中に浸透していった素材。天職であるかのように墨絵の世界に没頭していきました。
“水墨画”といえば“山水”や“花鳥”がまず頭に浮かびますが、荒井さんの作品は、斬新で鮮烈で洗練された格調高い抽象画。
実は結婚して妊娠するまでは具象画を描いていたとのこと。
ところが、自分の胎内に宿った生命が、荒井さんを突き動かし、“命の魂(玉)”を意識するかのように、丸いモチーフばかり描き始めた。
そして、ひとつの丸に、もうひとつ丸、もうひとつ丸、・・・というように、いろんな丸が連なっていきました。
これは、命をつなげるということ、細胞が増えていくように子どもが成長していくこと、子どもへの愛情の増殖を意味します。
二人の子どもたちが大きくなって、だんだん意識が変わってきたのだそうです。
現在は、自分自身のたどってきた人生、日々の平凡ながら多様なできごとの積み重ねという意識の丸丸丸・・・。

国内のみならず、パリ、ベトナム、スペイン、ドイツ、ニューヨーク、・・・など、海外でも展覧会等の活躍が著しい。
昨年は、未知の国・アルメニアへ。  過去に起こった虐殺や民族紛争など、痛ましい爪あとがまだ街中に残っているようです。
反面、教会や修道院の荘厳さ美しさは見事だと熱い報告を受けました。紀元301年に世界で初めてキリスト教を国教化した国だとか。
あらゆる場面での体験・体感は、荒井さんの体に入って昇華され、作品として放出されているようにみえます。
あと何年か経って、子どもたちから手がはなれたら、二人でいろんな国を旅しようねと楽しみにしています。
そのとき、荒井さんはどんな絵を描いているのでしょうか。なにか新しい丸の意識が芽生えているのかもしれません。



幸せ♪二階堂明弘さん


数年前、多数の作家モノが置かれた店で、おもしろいなと思って買った器が、後に二階堂さんのものだったとわかりました。
また、ある日、「風情のある器を都内のギャラリーで見てナイスだったよ」と荒井さんからメールがきたその器も二階堂さんのものでした。
一昨年、益子に用があり、「そうだ。二階堂さんに会いに行ってみよう」と突然思い立ち、連絡先を人づてに教えてもらって、即アポ。
ちょうどその時、荒井さんを誘って、仕事と遊びを兼ねて益子へ向かいました。

初めて会った二階堂さんは、イマドキの草食系男子のようなシュッとした印象でしたが、ブレない芯を持つ実直な青年でした。
荒井さんも交えていろいろ話をしているうちに、どういうわけか、荒井&二階堂の二人展をやることになりました。
これが必然的な縁なのかもしれないとも思った。
それ以降、すさまじい頻度で個展をされていて、何度となく二階堂さんとは顔を合わせていますが、いつも涼しい顔をしています。
ご自分の展覧会だけではなく、昨年“陶ISM”という若手陶芸家のための活動を立ち上げ、きっと目の廻るような忙しさ。
それでも、やはり、落ち着き払ってクールにたたずんでいる。が、内面では、燃えている。たぶん。

今年は二階堂さんにとって、プライベートでは、結婚、年末には父親になり、大きな節目の年でもあります。
常に沈着冷静な彼が、もらした言葉。「子ども生まれたら、奥さんをとられちゃうなぁ。」と。
ちょっと初々しい幸せいっぱいの素の姿をかいま見ました。

益子の土にこだわり、独自のスタイルを貫く一方、周囲からの要望や意見にもきちんと耳を傾け、柔軟な一面もあります。
また、作品を提案するのに付随するソフト面、例えば、茶会や即興、今回のような食事会などのイベントにも積極的に取り組まれます。
そして、細やかな気遣いと行動が身についています。
そういえば、以前、一緒に食事しているとき、チャカチャカと世話をやいてくれたのを思い出しました。まるで旅館の仲居さんのように。
気が利かない私が「すみませんねぇ。男性にこんなことさせちゃって。」と言うと、「いやいや、ふつうですよ。」と、また手が動く。
以前、ウチに来てくれた時、腰を痛そうにロボットのように歩いているので、尋ねると、前日コンをつめてロクロを挽いてヘルニアを悪化させたと。
いつなんどきもクールに淡々と全力でやってのける二階堂さんを見ていると、見かけや年齢よりずっと懐の深いオトナなのかも。

今回、イベントとしての食事会を催すにあたり、イタリアンのフルコースの器を全て二階堂さんに制作していただいています。
打ち合わせや問い合わせで時々やりとりをしていますが、「だんだん楽しくなってきました〜!」と歓喜の声を聞きました。
イタリアンの名店“Cucina Tokionese Kozima”さんでは、ふだん、白い磁器の食器で食事をいただいていますが、
二階堂さんのバラエティ豊かな渋くてマットな器に盛られたお料理はどんな違った表情を見せるのでしょう。ワクワク♪


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