ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.57 "Jikonka・米田恭子さんの暮らしと仕事" "WESTSIDE33・寺地茂さんの職人技"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.57 "Jikonka・米田恭子さんの暮らしと仕事" "WESTSIDE33・寺地茂さんの職人技"

<2013年8月号>


Jikonka・米田恭子さんの暮らしと仕事

三重県にある江戸時代から続く宿場町・関宿に“而今禾(じこんか)”はあります。
築150年の日本家屋で15年前、米田恭子さんとご主人の西川弘修さんが暮らしをスタートさせました。
住宅であるとともに、生活道具の店とカフェの空間でもあります。
いろいろな媒体で、この而今禾のこと、お二人のことが取り上げられているのはよく目にしていました。
店ではあるが、米田さんの淡々となされる日々の暮らしの延長というのか、その一部というのか、
あまりにも自然に営まれているライフスタイル全てが、心地よく清々しく私たちに発信されているのでしょう。

そして、そこから発展して、3年前、世田谷に東京店を立ち上げられました。
ここはある外交官の方が、海外からのゲストのための宿泊施設にと1970年代に建てられたもので、とてもモダンで美しい住宅です。
米田さんはこの建物にひとめぼれをして、ここ東京で三重とは違う提案をしたいと出店。
また、今年の9月、台湾・台北に出店!
台湾という国に対する私のイメージは、牧歌的な風景や島国を象徴する穏やかで温かい人たちが住む国。
米田さんがおっしゃるには、台湾にはお茶の文化が根付いていること、そして、工芸にも関心が高く、国民性として品格が感じられると。
日本の現代工芸や丁寧な手仕事の道具で、日々の心豊かな暮らしを大切にする精神を共感してもらえるとのこと。

米田さんは「お店をするということは、社会的な責任をともなう。」とおっしゃいます。
「そこから発信する全てのものには、それをつくる背景があり、お店はそれを当然知り、理解する必要がある。
 それを選び、紹介する意味や影響を考えつつ仕事する。
 お店は、たくさんのメッセージを含んだ自分の表現の場である。よい社会を作るひとつの力となりたい。」と。
その話を聞いて、私は頭をガツンと殴られた想いがしました。
「自分の好きなモノを提案したい」という、いわばジコチューな考えの私の意識の低さ・・・。

米田さんは“Jikonka”をとおして、衣食住の暮らしを提案。(『而今禾の本』から抜粋)

“食と料理”

顔が見える食べものを求めて、つくり手とつながる。
無駄なく食べて、捨てずに使い、最後には土に還す。
而今禾の「食べる」ことは、すべてぐるりとつながっている。


“器を使う”

飲み物を入れたり、花を挿したり、用途は決めず、自由に使う。
いろんなものを受け止める、それが本来の器のすがた。
古いもの、作家もの、陶磁器にガラス・・・。それぞれに良さがある。


“自然を取り込む”

三重・関宿の店が東海道の古い町並に佇む日本家屋である のに対して、東京店はその対極的なホワイトキューブの洋の空間。
ここで、花いけの教室を始め、季節や自然を暮らしに取り込んでみる。


“布と服”

上質の布を日常の服に。
台所に立ったり、掃除をしたり、洗濯物を干したり。
働く時間こそ、「いいもの」を身につけたい。
簡素でありながら、動きやすく、着心地よく・・・。
自然に、上質の布にいきあたる。
さらに、もっと、手織りや草木染の手仕事にも。
丈夫で心地よい、ていねいな仕事の布たちが、さまざまなかたちに 生まれ変わっていく。



上記の4つめの“布と服”に注目し、今回、心地よい米田さんデザインの服を展開することになりました。
実際に触れて体を通してこのことを体感していただきたいと思います。



WESTSIDE33・寺地茂さんの職人技

“WESTSIDE33”はその名のとおり、京都・三十三間堂のすぐ西側にあります。
職人・寺地茂さんがひとつひとつ丹念に鍛造した銅・真鍮・アルミなどの鍋や小物が並びます。
一枚の金属の板を、木槌や金槌でひとつひとつたたき出してカタチにする。
そのたたいた鎚目は美しいだけではありません。
叩いて鍛えるのが“鍛造”。
叩く度に強くなる。これは機械でプレスしたものとは比べものにならないほど強固になるのです。

寺地さんは“作家”ではなく“職人”であることに誇りをお持ちだ。
もちろん、創造性を以て制作されているわけですが、使う人のために同じモノを同じように作り続ける。
鎚目の違いこそあれ、できあがってくる鍋は、ほとんど同じサイズやバランスで作り上げられます。

それにしてもバリエーションの豊富さに、サイズ展開に、洗練されたカタチに驚かされます。
また価格の安さもうれしい。
職人が精魂込めて作った道具を、暮らしの中で気軽にどんどん使えるということがうれしいのです。

gallery ten を大網に移転する際、広いスペースのテナントを借りられたので、思い切ってカフェも併設することにしました。
コーヒーカップやケーキの皿などは、いろいろな作家の器を。
水は木村硝子のサイズ違いのグラスを。
そのグラスを載せるものを何にしようか、かなり迷いました。
布のコースター?レース編みのコースター?直にトレイに置く?・・・・・。
カフェで使うので数量が必要。コストもかけられない。清潔感がほしい。耐久性もほしい。
あれこれ検討している時に、「コレだ!」と選んだのが、WESTSIDE33のアルミの皿だったのです。

今回は、アルミ、銅、真鍮など、鍋やカトラリーや皿やカップなど、たくさん勢揃いします。
キッチンに立つのが楽しくなりそうです。



コラム vol.57 "Jikonka・米田恭子さんの暮らしと仕事" "WESTSIDE33・寺地茂さんの職人技"