初夏の風のような須藤泰孝さん
須藤さんがガラス作家になったきっかけは意外な出会いから始まりました。
須藤さんのお母様は美大のご出身。
おばあ様は絵を描いたりパッチワークや切り絵などがご趣味で、遊びに行くといつも子どもの須藤さんは絵を描いていたとか。
また、おじい様も木工がご趣味で、自作の机やベッドを暮らしの中で空気のように使っていました。
そんな環境の中で育った須藤さんですが、高校まではサッカー少年。
その後、美大でも芸大でもなく大学では経済を専攻。八王子に住んでいました。
バイト帰りにふと通りかかった建物の中から吹きガラス作業をしている男性の姿が見えた。
何やらおもしろそうで、しばらくその場で覗き込んでいたところ、生徒募集の貼り紙が目に入り、そのまま申し込み週一で通い始めました。
その先生は富山出身で、須藤さんは就職活動をせずに、富山にあるガラス造形研究所に入ることにしました。
そこでは、ガラスを専攻していなくとも何かしら美術畑の人ばかりが入所し、唯一ほとんど素人の須藤さんがその中で学ぶことに。
苦労も多々あるも、一日中ガラスづくりをしていられることが楽しくてたまらず時間のある限り工房にいたそうです。
そこで2年間学んだ後、そのままそこに就職し3年間勤め、2006年、千葉に工房を構え独立。
一見、ぶっきらぼうで朴訥とした雰囲気の須藤さんですが、
いろいろ話をしているうちに、彼の心の温かさと情熱の熱さがひしひしと伝わってきます。
花びらを溶かして色水を作った子供の頃の懐かしさを感じられるようなものを作りたい。
今まで見てきた北陸の澄んだ空や生き生きとした植物からも強いインスピレーションを受け、それらを具現化したい。
やきもの、木、漆、布、紙、・・・いろいろある中でも、つきつめると最も厄介でおもしろくて美しいのがガラスだと言います。
「こんなものを作ってほしいなぁ」という要望に、きちんとした技術と熱意で制作することにも喜びを覚えるそうです。
今回、器や花器などバリエーション豊かに勢ぞろいします。どうぞご高覧くださいね。
初夏の風のようなフクイリハルさん
いつも爽やかな笑顔のリハルさんは船橋の『アトリエ・イド』主宰。
”イド”とは・・・。
母親たちのコミュニケーションの象徴”井戸端会議”の”井戸”であり、”I do”のローマ字読み(いど)でもあります。
学校でも会社でもない、家族でもない、しがらみの緩い場所でありながら、深い信頼に結ばれた斜めの関係、
いわゆる”サードプレイス”を地域に作りました。
『手しごと』と『コミュニケーション』を二本の柱として・・・
人と人とのつながりを重視した教室や、作品の制作・販売の場を展開しています。
リハルさん自身がデザイン・制作・販売するだけでなく、そのリネンウェアや編組品(へんそひん:ニットやカゴなど)の製作指導にも力を注ぎ、
地域の女性の力を生かした仕事づくりを体現。
人生の先輩方や、何らかのプロフェッショナルとタッグを組んで作り上げるのは作品だけではなく、
味噌づくり教室や子ども対象のワークショップ、さらには千葉を代表するクラフトフェア『にわのわ』の立ち上げなど、
地域の人々との活動は多岐にわたります。
フクイリハルという聡明な一人の女性から発せられる目に見えない暖かなネットワークが『アトリエ・イド』そのものなのです。
今回は、日常使いに大活躍のカゴと、リネンなど天然素材のキュロットスカートやパンツ、ブラウスを展開。
ペーパーコードで編まれているカゴは、丈夫で軽くカジュアル、そしてリーズナブルです。
ウェアの目玉はキュロットスカート。
ウェストがゴムなのですが、腰回りがスッキリ見えるパターンと縫製、また生地をたっぷり使った落ち感のあるシルエット。
ジャブジャブ洗ってパンッと干すだけのリハルさんのキュロット、私もヘビロテで着用しています。
また、イド・スタッフの中西愛子さんの指導により『人狼ゲーム』を開催します。
これは、参加者一人一人にしか知り得ない断片的な情報をつきあわせて真実を突き止める推理ゲーム。
参加者の言動=表現が勝敗のカギを握るのですが、遊びながらコミュニケーション力が磨かれ、公私の場面でも生かされるというものです。
リハルさんの提案するさまざまなモノ・コトを体感する展覧会です。めいっぱいお楽しみくださいね。
コラム vol.103 "初夏の風のような須藤泰孝さん" "初夏の風のようなフクイリハルさん"