掛井五郎さんの情熱
来年90歳になられる掛井五郎さんの作品からほとばしるパワーには驚きの連続。
静岡で生まれた掛井さんは、絵の上手だったお兄様の影響もあり東京藝術大学にて彫刻を学ばれました。
以降、70年近くずっとずっと精力的に創作を続けておられます。
錚々たる芸術家とともに日本のアート界を牽引してこられた大御所ともいえる方ですが、謙虚でにこやかで自然体。
掛井さんのアトリエやご自宅には所せましと壁にも棚にも床にも多くのアートがあふれています。
ブロンズの彫刻や油彩画もさることながら、菓子箱やトイレットペーパーの芯がユニークに変身した作品に目を奪われる。
壁にかかっている絵も、カレンダーの裏に描かれていたり、暮らしの中にある身近なものが画材となるのです。
なんと以前私が手土産にお持ちしたものの外箱と包装紙がアートに化けてプレゼントされ、大感激!
掛井さんの手から生み出された全ての作品に、大人たちがとっくの昔に失ってしまったピュアで生き生きとした情熱が息づく。
どの作品も今にも動き出してきそうな躍動感と迫力が感じられます。
そう、それらは”生”。生きている、ナマである、内から何か生まれ出る、・・・そんな感覚をダイレクトに覚えます。
掛井さんは食欲旺盛なのだそう。きっとそれもご自身の”生(元気)”の源となっているのでしょう。
今回、彫刻、版画、ドローイング、ブローチ、作品集など、掛井五郎さんのあらゆる作品の一端を展開いたします。
2年前、五郎さんのご長男・隆夫さんが財団を立ち上げられ、膨大な作品の管理や展示手配を。
初日は隆夫さんが在廊され、お父様のこと作品のことなどのお話を伺えますので、ぜひおいでくださいませ。
小泊良さんの情熱
静岡出身、沖縄在住の小泊良さん。
年々活躍の場を広げ、いまや国内外でひっぱりだこの小泊さん。
その人気の理由を私なりに分析すると・・・・・。
絶妙な絵のテンポとバランスと間、造形美、潔いシンプルな線、コッテリしているけど後味よし、器としての安定感、色彩、
・・・・・と、作為のない作為が、私たちのカラダに心地よくスッと入ってくるのだと考えます。
小泊さんはいつ会ってもテンションが平らだ。
でも内に秘めたる熱いものが感じられる。
発表の場はものすごい勢いで増えてきているのに比例して、それぞれの展覧会で必ず出される新作も増えます。
絶えず新しいものを作りたいという小泊さんから、常にフツフツと湧き上がってくる何か。
アイデアなのか経験なのか元々持ち合わせた能力なのか・・・・・。
もちろんそれらもあるのでしょうが、そもそも器に絵を描き始めたきっかけは、お子さんの絵本だそう。
子ども向けの明解で単純な絵が、小泊さんの手にかかるとたちまちクールな魅力に昇華する。
アトリエに行った際、出されたお茶とお菓子。カップは小泊さん作、小皿は息子さん作。
息子さんの皿は何の違和感もなく、そこに描かれた絵は確かに小泊イズムでした。
二人の絵は、独自の空気を放っていて互いに溶け合っていることを目の当たりにし、興味深く見入ったのでした。
テンでは3回めの小泊展。 今回はどんなおもしろいものが見られるのか楽しみでしかたありません。
コラム vol.127 "掛井五郎さんの情熱" "小泊良さんの情熱"