ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.13 "津田清和さんのアトリエ訪問""大村剛さんのアトリエ訪問"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.13 "津田清和さんのアトリエ訪問""大村剛さんのアトリエ訪問"

津田清和さんのアトリエ訪問 大村剛さんのアトリエ訪問(ギャラリーテン〜コラム vol.13) <2007年10月号>









津田清和さんのアトリエ訪問

近代的で立派な“富山ガラス工房”という建物。
ここは、ガラス作品を販売しているショップや、ギャラリー、体験教室、広々として設備充実の創作工房が併設されています。
長身でスレンダーな津田さんが汗をふきふき出迎えてくださいました。

津田さんの作品に出会ったのは、3年ほど前の青山のギャラリーにて。
初めて見たとき、それがガラスだとは到底信じられませんでした。
ただ、そのものがガラスであろうとなかろうと、その肌合いの美しさに秒殺されてしまいました。
そして愛でても愛でても飽きない。ず〜っといろんな角度から見つめていたのでした。

津田さんは関西大学ご出身。
なんと私は同窓生なんです。勝手に親近感を覚えています。
大学卒業後、会社員となり、結婚退職して、平々凡々と過ごしてきた私には、津田さんの生き方がキラキラしてみえます。
私が知っている作家さん方のプロフィールは、いろいろです。
代々引き継がれてきたその工芸の道を行く方、
やりたいことが最初から明確でその学校で学ばれた方、
素材を転向して新しいモノづくりに邁進する方、
そして、全く違う分野から突如として作家となった方・・・・・。
津田さんは一番最後のパターン。
最近おもしろいと思う作品はその最後のパターンの作家によるものが多いことに驚きます。
常識にとらわれていないというか、新しい視点から挑戦がみられるというか、とにかく斬新で刺激的なのです。

ガラスを吹いてカタチを整えていく工程をみせていただきました。
炉の中で液状になったガラスが、絶妙に回転される長い棒の先から吹かれる息によって、みるみる間にカタチが変わっていく。
再び炉に入れ、また柔軟になったガラスを、いろんな道具を駆使して思いもしなかったカタチとする。
まるで軟体動物のように変化していくその物体は、津田さんの手の技と感性によっていかようにもなる。
時間が勝負だ。短時間のうちに呼吸をも止めるような集中力で成形されるのがすごい。

あの金属のような重厚な肌合いはその後の津田さん独自の加工によるものです。
その作品では、見たとき、触ったとき、持ち上げたとき、それぞれに感嘆の声が出ます。
そんな体験をしてみませんか。

大村剛さんのアトリエ訪問

私が大村さんを訪ねたのは今年2月。
岐阜県多治見にある“studio Mavo”
その後6月に、大村さんはご自分の故郷の福岡に帰られ、アトリエを構えておられます。
そもそも大村さんが陶芸をやろうと思われたきっかけは、福岡で作陶されている岩田圭介さんの影響が大きいとのこと。
岩田圭介さんの創りだされるモノだけではなく、その人となりに心酔し、大村さんのアトリエ内には、岩田さんが好まれるという小説が本棚に並んでいました。

もちろん、私も岩田さんの作品は大好きです。
作成の意図がみえない彫刻のようなプリミティブさが魅力です。
古代の石とか岩でできたかのような素朴な質感とカタチなのに、なぜか洗練されている不思議な作品。
大村さんが岩田さんに魅了される理由をもっともっとつきつめてみたくなりました。

さて、大村さんのアトリエの両側には天井までの大きな棚がしつらえられ、そこには、大村さんお気に入りのいろんなものが置かれていました。
好きで側においていつも眺めていたいもの、インスパイアされるような美しいもの、きれいなビンに入った顔料、・・・・・。
そして木製のパチンコ盤、古めかしい何かの道具、刃物、・・・・・。
それらの中に何の違和感もなく、大村さんの作品がたくさん。何の違和感もなく。
独特の質感と色、形、大きさの作品たち。
ごちゃごちゃあるけど、支離滅裂でもない。
ここにあるいろんなものは、大村さんにとって、同じカテゴリーに属するのかもしれません。
古道具のおもちゃ屋さんのようなたたずまいとでもいえるでしょうか。
それぞれの作品にキャラクターをつけ、アニメにしたらおもしろいだろうなぁと想像せずにはいられない。
そのうち、アメリカのPIXARからオファーが来ないかなぁ・・・。
大村さんは目鼻立ちがキリっとしていて、とても精悍で丹精なオトコマエです。
作家と作品のイメージがぴったりくる人と、ギャップが大きくて意外な人がいますが、大村さんは前者。
作品に遊び心やかっこよさ、独創性を感じるけれど、芯には品のよさが見え隠れする。

大村さんの作品は見た目だけではなく、ものすごく使いやすく頑丈です。
彼の器になにかをのせてサーブすると、高い確率で、「これいいね」という声が返ってきます。
サラっとつくられた感じのフォルムですが、かなり奥深いのです。

若い大村さん、今後どんなものを創作していかれるのか楽しみです。

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