ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.21 "小山義則さんの土鍋""マクロビオティック"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.21 "小山義則さんの土鍋""マクロビオティック"

小山義則さんの土鍋 マクロビオティック(ギャラリーテン〜コラム vol.21) <2009年2月号>

小山義則さんの土鍋

小山義則さんのアトリエはやきものの町・笠間にあります。
笠間は小山さんの生まれ育った町の程近くにあり、なんとなくこの場所に窯を設けられたそう。
笠間に築窯される前、伊賀の陶芸家・小島憲二さんに師事されました。
伊賀の地は太古の昔は琵琶湖の湖底で、この地層から採れた土は、炭化したプランクトンなどの有機物を多く含みます。
その有機物は焼成時に蒸発し細かな気泡を作ってくれるので、火によって膨張する土中の空気の逃げ道となります。
そのため、耐火度が非常に高く、丈夫な焼き物ができるのです。
こうして江戸時代から直火の土鍋や土瓶が作り続けてこられ、“伊賀≒土鍋”とイメージされるほどになりました。

小山さんはやわらかい雰囲気のある方ですが、やきものに対して真摯に向き合い、彼独特の哲学をお持ちだと感じました。
最近土鍋の陶土に混入されるようになってきた長石の粉が原料の“ペタライト”を小山さんは一切使用されません。
これは急熱急冷に耐え、土鍋調理をより手軽に簡単にする効果があるそうです。

しかし、純粋な伊賀の土で作られた土鍋は、土肌の風合が違い、調理されたモノの味わいが違うとのこと。
また、薪窯で念と労をかけてやきあげられた作品には、ひとつひとつに小山さんの魂をみます。
窯をじっくり見せていただきました。とても神聖な空間だ。私には小さい教会堂のように思えました。
内側の天井にいた数匹の昆虫に眼がくぎづけになりました。“カマドウマ”。バッタの足腰をもっとガッチリとした感じのサイボーグのようないでたち。
聞くと、竈(かまど)などによくいて、馬のように見える虫なのでそういう名前だとのこと。へ〜っ。
私は初めてこの生き物を見たのですが、虫が苦手なはずなのに、なぜかそのときカッコイイと思ったのです。
家に帰って事典で調べて、「ぎゃーーーっ。気持ち悪いぃ!」 このコラムに写真を載せようと思っていましたが、一気にテンションが下がってしまいました。

さてさて、毎日我が家でごはんをおいしく炊いてくれる土鍋は小山さん作。
もう5年ほど前、あたりまえのように使い続けていた電気炊飯器が壊れてしまいました。
キッチンになるべく家電グッズを置かないようにしたいと思っていたのと、しばらく気になっていた炊飯土鍋。
タイムリーにも、たまたま入った都内のギャラリーで、白くてシンプルで温かみのある小山さんの土鍋が私に手招きしていました。
この際、思い切ってごはんを土鍋で炊くことにしようと決意し、その日からウチでずっと大活躍してくれています。
さすがに5年も使っていると、鍋肌はかなりいいアジが出ていて、底はヒビだらけですが全く問題なし。
たくさんのヒビは、毎日炊くお米の粘りがノリの役割を果たし、ますます丈夫になっていくのです。
最近テレビのCMで内釜が陶の電気炊飯器の宣伝をよくみますが、これは4〜7万円という高額商品。
土鍋だと、スーパーで売っている量産品なら3千円くらいから、作家モノでも1万円くらいからというリーズナブルさ。
しかも、自分で料理したという実感もある。でもあの高価な炊飯器はよく売れているらしいというから驚くばかりです。

土鍋で炊くごはんはとてもカンタンでおいしい。10分強火→10分弱火→火を切って15分蒸らす。コレだけ。
外蓋を開けて、内蓋を開けると、ほわぁ〜んと湯気がたつ。米粒がひとつひとつ立って、ピカピカ光っている。
しゃもじでひっくりかえすと、底のおコゲがペリっとはがれ、まずは誰よりも先にひとつまみ口の中に。
食事して残ったごはんはそのままにしておき、翌朝、小さく裂いた干し貝柱と水をたくさん足して6〜7分ほど強火で再び炊く。
火を止めてしばらくグツグツさせて2〜3分。塩をちょっと入れかきまぜて、お椀に盛ってゴマをパラパラ。おいしいおかゆのできあがり。
しかし!最近、陶の“おひつ”なる優れモノを初めて知りました。おひつと言えば、曲げわっぱやさわら材の木のものをイメージします。
炊きたてごはんを入れると、余分な蒸気をおひつが吸って、シャキっとした弾力のあるごはんになる。ここまでは陶も木も同じ。

残ったらそのまま陶の蓋をして冷蔵庫に。また食べたいときに、そのまま電子レンジでチン♪
ラップをかけてチンするとラップに露がつきますが、陶の蓋だと陶が吸っていた水分を蒸気化した上に露がつかずにまたまたシャキっとしたごはんに。こりゃ便利だ。

今、鍋は進化しています。鍋でいろんなことができます。寄せ鍋、しゃぶしゃぶ、おでんなどはもちろん、焼いたり蒸したり冷やしたり(?)することに注目。
鍋に油をしき直接焼くのもよし、網を内側に入れその上で焼くと、遠赤外線効果で食材の芯までしっかりと熱が入りふっくら仕上がる。
また最近では陶でできた穴のあいたすのこをセットし、野菜や肉や魚などを載せて蒸すと、食材そのものの味が凝縮されて旨みが増す上にヘルシー。
茶碗蒸しやプリンも、ゆっくり加熱され保温性が高い土鍋で蒸すと、スが入りにくく滑らかに。
おもしろい用途としては、水をくぐらせた鍋本体・すのこ・蓋の鍋底に氷を入れ、すのこの上にお刺身を載せ蓋をしたら、気化熱効果で天然の冷蔵庫状態。
土鍋、GOOD JOB!


マクロビオティック

「穀物菜食」「玄米菜食」と呼ばれる“マクロビオティック”は、明治時代の食養論に端を発すそうですが、近年ますます注目されるようになってきました。
このマクロビには3つの大きなコンセプトがあります。
@“身土不二” 土地柄と季節に合った食べ物をとることで、身体は環境に適応することができ、健康的な生活を送ることができる。
A“陰陽調和” すべての物は陰性の力(拡散していく遠心的なエネルギー)と陽性の力(収縮していく求心的なエネルギー)からできていて、この陰陽に基づいて食材を選び調理法を考えることによって身体を整えていく。
B“一物全体” 一つの食品を丸ごと食べることで陰陽のバランスが保たれる。

少しかじろうとしましたが、奥が深くて、理論はチンプンカンプンです。
ただ、人間の本来必要とされる最低限の活力を健康的に効率よく代謝させようとする仕組づくりのうちのひとつなのかなぁと勝手に理解。
基本的に玄米を主として野菜、穀物、豆類や海草を食す。肉類や卵、乳製品、砂糖を用いない。
そういう食事を毎回続けていけば、確かに体内が浄化されていくことでしょう。
私は、焼肉、ハンバーグ、しゃぶしゃぶ、グラタン、オムレツ、ケーキ、・・・・・、アルコールが大好き。
その上、運動不足だし、バナナダイエットでなんとかしようと考えているし、たいがい腹12分目だし、・・・・・。
日頃の食生活に少々罪悪感を抱きながらも、たまに、マクロビのランチを外食して、体によいことをしている気になっています。
友人がマクロビに忠実に食事をしていますが、それを続けていると肉や魚を体が欲さなくなるらしい。
きっと私ならそうなる前に「カ、カルビ食べたい〜」と禁断症状が起こるはず。
それでもやはり健康は気になる。完璧には難しいけれど、ちょっと勉強して我が家の食卓にもとりいれてみようかと思いはじめました。
先日参加したマクロビ料理教室で、幼い子供連れの若いお母さんが多いのにびっくりしました。食を軸とした健全な暮らしに対して意識が高いのです。
今回、マクロビのエキスパート・檜山扶佐子さんをお招きし、イベントを。
なんだか難しそうなマクロビオティックについてのわかりやすい入門レクチャーと、日常に取り入れやすいお料理をデモしていただきます。食生活のヒントがみつかるかも。

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