舟越桂さんの彫刻
私は舟越桂さんの大大大ファンです。
最初に出会ったのは、十数年前、青山のコムデギャルソンのショップにて。
そのディスプレイに使われていた彫刻(人物)を見て、一瞬のうちに全霊がひきこまれてしまいました。
穏やかで優しくてすっくとしている。
遠くを見るような視線の先は、目の前に立っている私を通り過ぎている。
楠でできたその物体からは、体温さえ感じるような温かみと、涼しい眼ざしによって、すごいオーラを発していた。
3年前の春、東京都現代美術館の展覧会で、桂さんの多くの木彫の前で何時間も立ち尽くしました。
ひとつひとつの作品が、充電器のように、どんどん自分の中にパワーを送りこんできた。
優しい気持ち、一生懸命な気持ち、真摯な気持ち、背筋がピンと伸びるような気持ち、・・・・・。
ヒトとしての大切な素養を高めていってくれている気がした。
ウチのトイレは、舟越桂さんの世界です。
数年前、やっとのことで入手した、桂さんの木彫を撮影された写真家・豊浦正明さんの写真。
それと、ポストカードを写真用のフレームに入れた額。
トイレという狭い空間においては、その二つがあるだけで、それはもう「世界」なのです。
彼の木彫やドローイングは、私には手が出なくてとても買えない。
宝くじが当たったら(!)、まずはそれらをゲットすると、心に決めています。
ミーハーな私は、舟越桂さんの新刊本のサイン会に出かけたことがあります。
初めて舟越さんを見た。
目が微笑んでおられたし、優しい口調でお話ししてくださった。
感動で涙が出そうになるのを必死でこらえ、緊張のあまり発してしまったひとこと。
「あの〜、舟越さんに木彫をつくっていただくことはできるのでしょうか。」
ご本人を前にして、何を言っているんだあぁ ( ゚ ー ゚ ;)!!!
ちょっとした間のあとに、やわらかいお声で「あなたを創るのですか?」と舟越さん。
・・・・・そのあとの記憶がありません・・・・・・・・・・・・。
桂さんの木彫の展覧会を gallery ten で開催するのが私の夢のうちの一つです。
ムリですね。絶対。
でも、ずっと願い続けていれば、夢がかなうかもしれないので、
無謀でも、ずっとずっと願い続けていきます。
万が一、その夢がかなったら、きっときっとみなさんにもその幸せをおすそ分けできることでしょう。
ヤマシタリョウさん
今回の展覧会の山下眼鏡工房を主宰するヤマシタリョウさんについて少し。
ある日、gallery tenで、何かおもしろい企画展はできないものかなぁと考えていました。
「今、私がほしいものって何だろう。う〜ん、あえて言うと新しいメガネかなぁ・・・。」
早速、インターネットで「めがね作家」と検索してみました。
そこでヤマシタリョウさんに出会ったのです。
ヤマシタさんは「RYO YAMASHITA」として、オートクチュールの眼鏡を創ってこられました。
昨年、プレタポルテを発表する個展が青山であり、そそくさと出かけていきました。
今まで生きてきた中での、めがねというものの概念を吹っ飛ばされてしまいました。
ただただ美しいのです。
これは実際にかけられるのか?はたまた、めがねというカタチをしたオブジェなのか?
ただ実用できるというだけではなく、心地よく顔の一部になる美しい眼鏡でした。
ヤマシタさんは、一見、作家さんらしくなく、その眼鏡をかけたモデルさんかと見紛うばかりです。
実際、とても紳士で品性が高く、大人のイケメン(!)。
美意識を強くお持ちで、眼鏡創りには繊細で突き詰めた情熱を注いでおられます。
アトリエには、いろいろな道具が整然とあり、それらの道具それぞれが美しいのです。
ヤマシタさんは、ご自分の眼鏡は機能を追及したカタチだとおっしゃいます。
機能を追及した美しい道具でつくり、機能を追及した作品が美しい。
これまた、作家さんご自身まで美しい。
「美しづくめ」で創造された眼鏡は、もはや魔法の化粧品になり得る美のアイテムなのです。
今後もヤマシタさんの「RYO YAMASHITA」としてのご活躍が以下の予定(今年前半)で観ることができます。
・2/11〜 「リュネット・ジュラ」にてプレリリースの後、 ・4/1〜14、同店で個展。
表参道ヒルズのグランドオープン。
(「同潤会青山アパート」跡に、安藤忠雄さん設計の「表参道ヒルズ」が完成。)
「リュネット・ジュラ」は同潤会アパート時代からこだわりの高い舶来眼鏡を扱う眼鏡店。
・3/4〜 日本橋にある眼鏡舗「村田長兵衛商店」メインウインドウの飾り付け展示。
こちらは、徳川家康の招聘により1615年開業された老舗で、皇室との関わりも深く、昭和天皇の眼鏡といえば馴染み深い
かもしれません。
・5/23〜28、世田谷美術館分館清川泰次記念ギャラリー(成城)にて個展。
コラム vol.3 "舟越桂さんの彫刻" "ヤマシタリョウさん"