ごはんを作ってくださっているゆうさん
つくるひと・こばやしゆうさん
いろんなメディアでとりあげられておられる“こばやしゆう”という人に、ずっと前から興味がありました。
2年前、染色作家のウスタニミホさんの葉山のアトリエを訪ねたとき、
「昨日、鎌倉のギャラリーでおもしろい展覧会やってて、コレ買ったのよ。」と、犬のオブジェを見せていただきました。
素朴で何とも言えない雰囲気をかもしだしていて、強く惹かれてしまいました。
そこで、その展覧会に連れて行っていただいたのが、ナマ(!)こばやしゆうさんに初めてお会いできたきっかけでした。
そのときのゆうさんの第一印象はというと、“衝撃”のひとこと。
まずは、素肌に大きな布を巻きつけ、素足にサンダル履き。
その存在に圧倒されたのか、身長2メートル以上のすごく大きなヒトに見えました。もちろんそんなに大きくはありません。
いでたちに意表をつかれるばかりか、話していると、ご本人そのものに強い好奇心が芽生えてきました。
今まで私の周りにいた人たちの中には全くいなかった人種。
男性とも女性とも、日本人とも外国人とも、大人とも子供とも、現代人とも太古の人とも、・・・・・、どのカテゴリーにも属さない人。
お話の仕方は少女のようにかわいらしく、また妖精のような純粋な瞳をしていらっしゃる。
でも、母のような大地のような、おおらかで包容力の大きさを感じ、おもわずゆうさんの胸にとびこみたい衝動にかられるほどです。ホント、不思議な人だ。
先日、ゆうさんのアトリエに向かう東名高速で、足柄あたりを走っていたとき、突然正面にドーンとでっかい富士山が現れました。
あまりに大きい富士山で、テンションがあがりアクセルを知らず知らず踏み込んでいて、気が付くと時速160キロを超えていてびっくり。
静岡・牧の原市のゆうさんのお宅は、目の前数十メートルが海。家のドアから波打ち際まで歩いて160歩だそう。
お宅に到着するや「お腹すいていますか?」と聞かれ、「はい、お腹ペコペコです。」と答えました。「待ってました!」というスマイルでキッチンへ走りこまれました。
せっせと圧力鍋に火を入れ玄米を炊き、野菜や豆腐や近海でとれた魚をお料理してくださいました。
子供がままごとをして遊んでいるかのように、楽しそうに鍋や食材が扱われる。
ごはんの後は、丁寧にネルで淹れたコーヒーと、焼いて用意してくださっていたカボチャのケーキ。
そのケーキ1ホールのてっぺんにロウソクを立て火をつけ、フーっと吹かせてくださった。なんて、うれしい厚いおもてなしなのでしょう。
食後、「海岸に行きましょう。」と誘われました。
牧の原の海の水平線の向こうは伊豆半島、左側(東側)には大きな稜線の裾まで見える富士山が。
下を向いて歩いていると、流された貝殻や風化した穴だらけの石ころ、流木がゴロゴロとありました。
手ぶらで出かけたので、その足元の宝物たちをコートのポケットいっぱいに詰め込んで歩きました。
お互いの子供のころの話、兄弟の話、道具の話、食べ物の話、人間関係の話、・・・・・。とりとめもなくずっと話し続けながら海岸を歩きました。
大枠だけ大工さんに作ってもらったというゆうさんのお家とアトリエは、壁から部屋からキッチンから全て手作り。ロフトまで。
しかも、掃除用品や台所用品など、生活をとりまく道具はほとんど手作り。
作家としての創作だけでなく、暮らしそのものがゆうさんの“つくる”場であり、彼女自身なのだと思いました。
日の出とともに起床、コーヒー豆を挽くことから一日が始まり、夏はすぐに海に入る。
サーフィンをしたり、水中にもぐったり、ゆうさんの大好きな朝の海岸も満喫する。冬はプールに行って泳ぐ。
驚くことに、トライアスロンの大会にも出場する。送られてきた写真には、満面の笑みでゴール。すごい。楽しいことがたくさんありすぎる。
自由奔放と思われるゆうさんの生活は、実は規則正しいサイクルでなされています。
玄米や野菜たっぷりの朝食を丁寧に作ってしっかり摂って、針仕事をして、土間を掃き、創作活動をして、海岸に読書に行く。
手をかけて作ったケーキやパンでおやつをとり、夕食のあとは、写真や絵いっぱいの日記を書く。ブログは詩集のようだ。
穏やかな穏やかなゆうさんからは、いつも満ち足りた気持ちで暮らしておられるのがよく伝わってきます。
突発的に何かハプニングとか腹立たしいことがあったとしても、そんなフラットな心理状態でいるゆうさんは、すぐにヒートアップできないのだとか。
「数日後に、ムカムカっとくるのよ。おかしいでしょ。」と、褐色の肌に真っ白い歯でにっこり。かわいらしく美しい。愛おしいヒトだ。
お金が貯まったらリュック背負って、即アフリカへ1〜3か月すっとんでいってしまわれます。
フランス語圏でコミュニケーションをとるために、過去にパリで語学を学ばれました。やりたいことは即行動。
ゆうさんのお宅に電話すると、「Hello!」と第一声。海外のお友達からのお電話が多いのでしょう。
日本やアフリカでの日々を楽しく過ごすために、仕事として作品を発表し、それを糧とする。ヒトとしての基本の生き方が淡々とここに存在する。
会期中は、過去にテレビ放送されたゆうさんの暮らしぶりや、アフリカでの様子などのDVDを放映したり、絵日記をご紹介いたします。
また、5月末にはゆうさんの新しいご本が出版される予定です。お楽しみに。
猪突猛進・鯉江あかねさん
あかねさんから電話があると、「オーモーダーさ〜ん、コイエアカネです〜。お元気ですかぁ?」と、元気いっぱいの声が飛び込んできます。
いつなんどきも、ハイテンションかとおもいきや、意外にも悩み症である。
おおらかで底抜けの明るさがあるし、ストレートに表現する反面、とても繊細で傷つきやすいというカオももちあわせているのです。
あらゆることに真剣そのもの、バーンとぶつかっていく突撃力と、生真面目さがあるからこそでしょう。
私のようにフツーの人が、日常を呑気に平平凡凡と暮らしているのとは違うのです。
常に、何かを生み出す、何かを創作する、何かを形にするという、“作家”という仕事は、
ゆうさんのように生活の一部となる人もいれば、日々、新しいモノをどう表すかという葛藤と闘っているあかねさんのような人もいる。
電話口で、あれこれと悩み事を言っていたかと思うと、突然、「でも、今は、やる気満々なんです。死ぬ気でがんばります!」と。
感情の起伏が激しいけれど、結果、「やるぞー!!!」という元気いっぱいのあかねさんに戻る。
もしかしたら、小さい波乱万丈を楽しんでいるのではないかと思えるほど、ジェットコースターのようなあかねさんがいじらしい。
あかねさんの一生懸命な姿勢は美しい。頼もしい。何か突拍子もないことをやらかしてくれるのではないかとワクワクしてきます。
そして、誠心誠意、がむしゃらにやってのけてくれるという信頼度が高い。こちらも何の不安もなく、あかねさんにゆだねられるのです。
誰しもいろんな内面をもっているものですが、あかねさんがあっけらかんと自らを全てあからさまにするというところがまた人間らしいと思うし、それが彼女の魅力でもあります。
今回は、キュートでパワフルなあかねワールドの鍋つかみばかりの出展です。
最初、「100点、作ってくださいね。」とお願いしていましたが、先日の電話では、「200点作る勢いでがんばりますっ!」との頼もしい言葉。
「最近は大きな作品を制作する機会が多かったので、久しぶりに作った鍋つかみが巨大になってしまいましたぁ。」と、ダイナミックな撮影用作品が送られてきました。
ウチでも何年か使っているあかね作品。2年前の展覧会のときに買ってくださった方たちも、次の新しい鍋つかみたちを首を長〜くして待っています♪
コラム vol.40 "つくるひと・こばやしゆうさん" "猪突猛進・鯉江あかねさん"