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江戸時代から続く窯・長谷園
三重県伊賀市は、松尾芭蕉、忍者、やきものの町として有名です。
江戸時代から続いている“長谷園”は、いわゆる伊賀焼の窯元。
この地方で土鍋を作っている窯元が多いのには訳があります。
40万年ほど前は伊賀は琵琶湖の底にありました。
長い期間をかけて陸となり、そこに堆積した土には有機物がたくさん含まれています。
この土を窯焚きすることで、有機物が焼失し、多孔質のやきものができあがります。
これは、加熱することで土が膨らむのを受け止め、耐熱性、保温性に優れた土鍋に適するのです。
長谷園には、13連の登り窯や、多くの職人方の工房、明治の建物、釜場から延びる長い煙突などがあり、
この場所だけは近代化せずに、長年ずっと変わらない風景が守られています。外国人の観光客も多いという。
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そして、なんといっても土鍋で炊くごはんはとても美味しい。
加熱すると遠赤外線効果によって、米の内部まで熱を通し、まろやかになった水で炊き上げる。
ふんわりとした粒が立ち、米そのものが持つ素材の旨味や滋養が引き出されます。
しかも20分で炊けるので、とても手軽に作ることができます。
gallery ten では、毎月期間限定でカレーランチを提供しています。
土鍋でごはんを炊き、土鍋でカレーを温め、お出ししています。
加熱後、火を切ってしばらくしても、土鍋の中はグツグツと保温されています。
美味しさが長持ちすると同時にエコでもあります。
今や、土鍋で炊飯する方が増えてきましたが、この便利かつ美味しさを知ったら手放せなくなります。
また、今回は、近田美穂さんによる土鍋を使ったスウィーツの料理教室も企画しました。
未知の土鍋活用術を知るのが楽しみです。
今回、長谷園さん、大谷哲也さん、椎名勇さん、深田容子さんの土鍋のバリエーションに加え、 田中千絵さんの銅の鍋や薬缶、赤畠大徳さんの包丁、松浦香織さんの鍋つかみを展開します。
秋の食卓が豊かになるこれらのアイテム、ぜひお楽しみください。
情熱の刃物づくりに挑む赤畠大徳さん
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私が赤畠さんの作品を知ったのは、ある友人から贈られた彼のパン切りナイフでした。
よく切れるとか刃渡りがどうとか、そういう機能性を確かめる前に、このナイフの美しさに感動しました。
刃はひとつひとつ叩いた跡がうっすらと見え、鈍く輝いており、丁寧に切り取られた四角くギザギザな刃先。
何とも言えない取っ手(柄)の無垢の木の表情と柔らかい曲線で、握ったときにシックリと手に納まる。
実際に使ってみると、気持ちの良い切れ味に満足度が増します。
三重県松阪で明治27年創業の鍛冶屋の5代目・赤畠大徳さん。
人懐っこい笑顔と耳に心地よい関西弁の温かな話しぶりに好感がもてます。
大阪体育大学を卒業し、体育の教師になろうと思っていましたが、・・・・・何か違う。
音楽が好きなので、楽器店でバイトをしてみるが、・・・・・何か違う。
自分のなかで「コレだ!」というものに巡りあえず、実家に帰り、家業の手伝いをしました。
厳格で責任感の強いお爺様、お父様の後ろ姿を見て育ち、大人になって父親の仕事に向き合う姿勢を意識する。
「父を越えられない。」
「父に負けたくない。」
「父にはできない自分の何か特別なものをつくりたい。」
すぐさま、京都の刃物鍛冶に入り、6年間修業し、技術を習得しました。
そして、父の工場の一角を間借りし、刃物をつくるための工房を作り独立したのです。
鉄を1000℃以上のコークスの炉に入れては叩き、入れては叩きを繰り返す。
鉄は叩けば叩くほど鍛えられ、どんどん強くなっていきます。
刃物は、鉄の部分と鉄を主成分として強固にした鋼(はがね)によって構成されています。
器や鍋とも違う、「切る」という高い機能性をもたせるため、温度管理や鍛造作業には細やかな神経と集中力を要します。
赤畠さんが心血を注いでひとつひとつ作り出す刃物は、職人と作家の魂が入り込んでいます。
自分の作った包丁を愛着を持って使ってもらうためには、自分のものづくりへの情熱がそこになければならない。
今回は三重と千葉で離れているため、かないませんが、
本来は赤畠さんが依頼人の顔を見て、その人に使ってもらうことをイメージして制作したいと言います。
今回は、パン切りナイフに加え、ペティナイフ、菜切り包丁、鯵切り包丁など、
家庭の調理で最もよく使われるものを展開いたします。
赤畠さんの情熱のこもった刃物をぜひご高覧くださいませ。
コラム vol.72 "江戸時代から続く窯・長谷園" "情熱の刃物づくりに挑む赤畠大徳さん"