ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.92 "大塚淳子さんの心地よいバッグ" "久米勝智さんの心地よいシャツ"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.92 "大塚淳子さんの心地よいバッグ" "久米勝智さんの心地よいシャツ"

<2016年7月号>


大塚淳子さんの心地よいバッグ

福岡でアンティークの老舗”UNTIDY”を営む大塚淳子さん。
アンティークを扱う個性的なお店は、都内に負けないくらい福岡にはあります。
その中でも独自の路線を守り続け大きな存在感を放っています。

大塚さんはUNTIDYのオーナーという顔と、バッグ作家という顔を持っています。
彼女のバッグは過去にも何度か企画展でご紹介しているのですが、ファンがどんどん増えています。
世界のヴィンテージの布を使ったバッグもおもしろいのですが、なんといってもビニールシートでできたバッグが大人気です。
工事現場などでよく見る、軽くて丈夫で水をはじくアレです。
大塚さんは、見様によってはチープなその素材を、革やおもしろい布を組み合わせて何ともモダンでキュートなバッグに仕立ててしまいます。
その感度の高さと使い心地のよさに大きな魅力を感じます。
ファンの方もそうでない方も、ぜひ新作を手にとってごらんください。

また、今回は、大塚さんセレクトのアフリカ、アジア、ヨーロッパなどの唯一無二のヴィンテージの布もご紹介します。
UNTIDYオリジナルのワイヤーのいろいろなグッズも展開。
ワクワクするようなものがたくさん登場します。
どうぞお楽しみに!










久米勝智さんの心地よいシャツ

私はシャツが大好きです。
デザインものの面白いものも好きですが、トラッドテイストできっちりと作られたシャツが特に好き。
前立ての一番上のボタンまで留めて、襟をピシっと詰めて着る。
たくさん持っているシャツの中でも、よく着るものは数点に限られてきます。

滋賀県彦根市で生まれ育った久米勝智さんの作るシャツは、私のストライクゾーンのど真ん中に位置します。
奇をてらったところはまるでなく、まじめに繊細に心地よさを追求したシャツ。
”ハレ”の日に着るものには緊張感や堅苦しさがあるとしたら、久米さんのシャツは”ケ”の日常に何度でも着られる安心感や気持ちよさがあるのです。
毎日ラフに着られるからこそ、素材やパターンや仕立てのよさが要だと思います。
素材選び、型紙づくり、裁断、縫製、ボタンつけ、・・・・・これら全ての工程に久米さんの手と魂がかかっています。
襟や袖、身頃のプロポーションもよく、シンプルながら洗練されています。
同じデザインで、素材、色、サイズのバリエーションがあります。男女も年齢も問わず、着て楽しめます。

人懐っこい久米さんには、最初から腹を割って話せる雰囲気があり、すぐに親近感を覚えました。
また、その中から、彼の誠実さや実直さが伝わってくる好青年でもあります。
それらをひっくるめた人となりが、そのまま作品に表れているような気がします。

私が久米さんや彼の作るシャツに感じたことは、そのまま久米さんのシャツづくりのコンセプトでもありました。
『人と暮らしにやさしく馴染む、毎日のための心地いいシャツ。
 一人の人間が縫い上げる丸縫い、手で付ける糸足の付いたボタン、すべての行程を滋賀のアトリエでひとつひとつ手作業で行っています。
 丁寧なものづくりを体感してください。』   これが久米さんの言葉。
作品からこれだけのものがダイレクトに伝わってくるということは、そこに力が蓄えられていることだと思います。
ぜひ一度袖を通してみてください。きっと「なるほど!」と納得できるにちがいありません。








コラム vol.92 "大塚淳子さんの心地よいバッグ" "久米勝智さんの心地よいシャツ"