ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.10 "横山拓也さんのアトリエ訪問""愛の庭"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.10 "横山拓也さんのアトリエ訪問""愛の庭"

横山拓也さんのアトリエ訪問 愛の庭(ギャラリーテン〜コラム vol.10) <2007年4月号>













横山拓也さんのアトリエ訪問

多治見に“studio MAVO”という、安藤雅信さんが主宰されている貸し工房があります。
ここには若くて勢いのある作家さんがた十数人がいらっしゃいます。
横山さんのアトリエがこの中の一室に構えられているのです。

横山さんの作品の魅力は、なんともいえないひび割れたマットな白の肌。
素焼きした黒土の上から、布に浸した白化粧をパタパタと押し付け定着させていく。
端のシャープなラインは、少しふき取り、よりキリっとした印象を生む。

もうひとつの魅力。それは彫刻のような造形。
薄かったり分厚かったりゆがんでいたりガタガタしていたりする。
アンバランスのバランスさ加減が潔くてきもちよい。
そのもの自身がオブジェとして美しい。
持ち上げるとずっしりしっくり手になじむ。
用途が何だかわからない。
でもだからこそ、こんなふうに使ってみようという想像をかきたてられる。


MAVOで活動する作家さんたち共同の4つの窯
アトリエの中を見渡したとき、一番先に眼に飛び込んできたのが、いろんなお寺の張り紙でした。
昔から歴史が好きだったという横山さんは、お寺の庭がとても気にかかるそうです。
庭にある石や植栽のあり方を観て、“場”を感じるとのこと。
う〜ん、やはり、横山さんの作品には、“場ランス(?)”があると、私は勝手に納得しました。

立教大学在学中、陶芸のサークルに所属されていたことがきっかけとなり、現在の作陶活動に至ります。
横山さんは、誠実で素直な好青年ですが、内面からは研ぎ澄まされた鋭い感性が伝わってきます。
・・・・・きっとタダモノではない・・・・・。と私は思います。





愛の



春だなぁと実感するのは、庭の白い花がちらほらと視界に入ってくるとき。
ユキヤナギ、ザイフリボク、ヤマボウシ、アセビ、コブシ、ハナミズキ、ジンチョウゲ、シロヤマブキ、ニラバナ、マンサク、コデマリ・・・・・。
暖かい陽ざしの下で、緑とのコントラストが爽やかな白。

この冬はあまり冷え込むことがなかったので、毎年何度かは雪が降るこの地域でも、厳しい寒さを感じることがありませんでした。
冬が寒ければ寒いほど、枯れた茶色の土から、鮮やかな緑の芽が出てきたときの感動は大きいものです。

ウチには、6〜7坪ほどの小さい庭があります。
その小さいスペースには、雑木林のようにいろんな樹木や草花が自然に育ち季節毎に姿を変える。
ボケ、オウバイ、ドウダンツツジ、ビヨウヤナギ、ヤマブキ、ナルコラン、ナンテン、ツリバナ、ヒトリシズカ、シラン、ユズ、カエデ、ヤマモミジ、カタクリ、 ミズヒキ、サカキ、シャラ、アベリア、ムラサキシキブ、ツワブキ、アジサイ、エゴノキ、ソヨゴ、ユスラウメ、マンリョウ、リュウノヒゲ、フッキソウ、カシ、 ゲッケイジュ、カクレミノ、サルスベリ、オダマキ、クマザサ、アオキ、ヒメウツギ、エニシダ、キンカン、ダイモンジソウ、ソヨゴ、ユキミソウ、・・・・・。


とにかくたくさんの植物が植わっていて、出番を待っている。
私が毎春楽しみにしているのが、オキナグサだ。
きれいな薄紫の大振りの花が頭をもたげるかのように咲き誇ったあと、白い絹糸状に変化する。
それが翁の白髪のようなのだ。
自然の美、心温まる美に感じ入る。

この庭は、造園家・栗田信三さんによる優しい優しい庭だ。
何の剪定も手入れもない雑然とした庭だが、春になると、毎朝幸せな発見がある。
「わぁ、こんな小さい花が咲いている!」「え?これは雑草?でもあまりにもかわいらしい。」
栗田さんが意図的に植えられた草花なのか、それとも、どこかから飛んできたものが育ったのか・・・。
時々、ウチのワンコが窓の外に釘付けになっていることがある。
赤い実をついばむ鳥をじーっと見ている。
赤い実に、鳥に、ワンコに、ついつい胸が熱くなる。

私は以前は植物にはほとんど興味がなかったが、なにより驚いたのが夫である。
私以上に無関心だった人が、この植物たちにみるみるひきつけられ、毎週末何時間でも庭でゴソゴソやっている。
植物の本が日ごとに山積みになっていく。ウンチクを語るようになってくる。いやに楽しそうだ。


山野草 ひふみ苑
千葉緑区高津戸町731-6(土気駅から車で5分)
TEL:043-295-8741 (水曜定休)
2年ほど前、近所に山野草のお店を発見しました。
清楚で可憐で凛としている草花たち。
このお店は癒しの場であり、店主の山本さんも心温かいよいおじさんである。
いろいろ教えてくれたり、珍しい植物を見せてくれたり、メダカのお家を世話してくれたり、・・・。
ズボラな私が枯らした花の鉢を持っていくと、とても悲しい顔をされる。
「ごめんなさい。」と何度か同じことをしてしまったが、苦笑いをしながら、また植え替えてくださる。

小さくてか弱いこれらの存在を守っていく思いやりは、確実に植物たちからの愛に変わる。
そして愛があふれる庭が家や街を守ってくれる。
過酷な自然環境にも耐え、毎年その時期になると必ず顔を出し私たちを幸せにしてくれる植物たちに感謝します。





コラム vol.10 "横山拓也さんのアトリエ訪問" "愛の庭"