ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.24 "ハシヅメミツコさんin金沢""渡邉貴子さんの美しい貫入鈴木涼子さんloves中国"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.24 "ハシヅメミツコさんin金沢""渡邉貴子さんの美しい貫入鈴木涼子さんloves中国"

ハシヅメミツコさん in 金沢 渡邉貴子さんの美しい貫入 鈴木涼子さん loves 中国(ギャラリーテン〜コラム vol.24) <2009年8月号>

ハシヅメミツコさん in 金沢


ハシヅメさんの愛車のカクカクとした内装


ハシヅメさんのお母さまの可憐なレース編みに
惹かれる

金沢は大好きな町で、冬の大雪がなければ一度は住んでみたいところです。
歴史的情緒あふれる街並みと伝統工芸や現代アート、浸透した奥深い文化が息づいています。
特筆すべきは、金沢市の文化に対する意識の高さと貢献。
文化を保存、継承、発展するだけでなく、工芸作家を育てることにも積極的に巨額を投じていることがすごい。

ハシヅメさんの愛車・イタリアFIAT社の年代もの Panda。
この車とは2年前の訪問以来、今回再会したのですが、見れば見るほど改めて感動!
カクカクとした外観フォルムの車体の内装も、シンプルで機能的で手動でアナログで・・・・・、やはりカクカクしている。
実は私も菓子折のような四角い車に乗っていますが、どうも最近のスタイリッシュな流線型にピンときません。

ハシヅメさんがガラス作家になられたプロセスはおもしろい。
大学の医療系学部に進学しようと、当時の共通一次試験を受験するが、点数が大幅に及ばず。→
浪人するという選択肢もあったはずだが、なぜか突然、教育大学の美術科に行こうと決意。→
かといって美大受験予備校に通うわけでもなく、いきなり高校の美術部に入部し、異色の新入部員となり、そして浮く。→
入試本番の実技試験では、あまりにも素人な作風が逆に高評価となり、みごと想定外の合格。→
卒業後、ご出身愛媛の地元中学の美術教師になり、子どもに教える楽しさを満喫する。→
ある夏休み、たまたま参加したガラスのワークショップで、教えることより自分で作る楽しさにめざめる。→
タイミングよく、(財)金沢卯辰山工芸工房が開設されることを知り、研修者に応募、受験、合格。→
修了後、倉敷芸術科学大学での実習補助員を経、金沢にて独立。→
・・・とまあ、波乱万丈かつ幸運の波にうまく乗りこなし今に至るということです。

ハシヅメさんの作品の技法は“キルンワーク”というもの。
石膏で型を起こし、そこにガラスのピースを置いたり、貼り付けたリして、窯で焼き様々な仕上げを施す。
独特のポップなパターンと配色が、眼に鮮やかに飛び込んでくる。
飾っていてもステキなのですが、ハシヅメさん曰く、「日常にどんどん使える器をつくりたい。」とのこと。
たしかにカタチはシンプルだし頑丈だし手にきもちよいし優しいし使いやすい。なにより使っていて楽しい♪
お住まいにもお邪魔したら、住空間が全く上記に同じ。
考えたら、家にしろ愛車にしろ作品にしろ、共通の感覚があり、地に脚ついたハシヅメさんそのものでもある。うん・・・・・。














渡邉貴子さんの美しい貫入

ある日、ネットで「へ〜、コレいいねぇ」と思った作品の画像がありました。
それを発見した日の週末に、都内で彼女の展覧会があることを知り、実物を見なければといそいそと出かけていきました。
その作り手・渡邉貴子さんは小さくて色白でかわいらしい若い女性でした。でも、内にひめたる芯の強さも感じられました。

渡邉さんの作品は、白い磁器の肌に、美しくて繊細な青黒い線描が入っています。
しかも、その線は均一ではなく粗いところ細かいところが混在する。
これは、土と釉薬の相性や特性を研究した結果、偶然と必然が成した技でした。
土を成形し自然乾燥し素焼きをした後、焼成時の収縮率が異なる釉薬を掛け分けて本焼きする。
収縮率の大小によって、貫入(ヒビのようなもの)の粗さが違ってくるので、それを計算して描くように釉薬を施す。
焼きあがった表面に墨を刷毛で塗りつけ、貫入に沿った線が入る。これが特長だ。
最近では、陶土を用いたり、柿渋液に浸して、貫入にシブを入れるという試みも。
上絵でもなく、象嵌でもない、自然に任せたヒビが活かされた線は、とても芸術的。
今までは、ロクロでひいた食器や花器や蓋モノを作っておられましたが、
今、このキレイな模様をより強調してみせるため、たたら(平たい板状のもの)で作ることがおもしろくなってきたそう。

瀬戸にあるアトリエに伺ったとき、壁にはいろんな作家のオブジェ展のDMがはられていました。
陶のヒトのオブジェも作られるのですが、どこかしら顔がご本人に似ているし、何かしらメッセージ性が感じられる。
はたして今後、渡邉さんの作品はどのようになっていくのか期待値大!



鈴木涼子さん loves 中国









京都の大学で中国文学を専攻し、卒業後、会社に就職された鈴木さんは、幼少の頃から絵を描くのが好きでした。
何かフツフツと絵をもっともっと描きたくなり、しかも何かワザを身につけたいと思うようになった鈴木さんは、思い切って退職。
そして実家のある名古屋に戻り、瀬戸の工芸の学校に入り、陶芸にひかれていきました。

白い磁器に呉須で絵付けをすることにシックリとくる感じがあり、現在そのスタイルで作陶されています。
一概に“絵”とは言え、見る人や自分自身で、想像力をふくらませられる余地のあるものが描きたいと思いました。
中国好きの鈴木さんにとって、そんなモチーフとなるものが、自然と“唐子(カラコ)”に行きついたのだそう。
鈴木さんの描く唐子は、マルマルとしていて簡素化されたキャラクター。
その子たちの姿を見ていると、器上で唐子が今にも動き出していくような錯覚をし、頬が緩んでしまう。
ふと思い起こせば、子どもの頃からずっと描いていた絵は動きのある人ばかりだったとか。

鈴木さんは、料理を盛ったとき、食べ進めていくとき、空のときを想定して、構図を考えて描いていきたいとのこと。
また、きっちりしすぎていないおおらかで温かい磁器を作りたいと。
たしかに、器そのものは分厚くて優しいフォルム。ごくごくシンプルで料理を映えさせる。
淡い青で描かれた唐子たちの絵が料理の下でかくれんぼして、徐々に現れるのも楽しい。
鈴木さんの器は、ウチの食卓→食洗機のレギュラーメンバーで、ガンガン使ってガンガン洗って大活躍しています。
器の中の唐子たちは、ピーターパンのようにずっとこの先も子供のまま。食卓に夢とパワーを与えてくれるのでしょう。

コラム vol.24 "ハシヅメミツコさん in 金沢" "渡邉貴子さんの美しい貫入 鈴木涼子さん loves 中国"