ハシヅメミツコさんのガラス作品の魅力
金沢にあるハシヅメミツコさんのお宅兼アトリエに伺うのは3度め。
ハシヅメさんの作品もアトリエもご自身にも、結構理解を深めてきました。
ガラス制作というと吹きガラスを想像される方も多いと思いますが、ハシヅメさんは“キルンワーク”という技法で、
石膏の型を起こしてそこにガラス片を詰めたり配置したりして電気窯で溶融成形します。
理屈ではわかっているつもりでしたが、今回初めて焼成直後のホカホカ状態のところから型を外す作業を見せてもらい感動!
あるグラスの例でご紹介しましょう。(右の写真をご参照ください)
@作りたいカタチを粘土で造形したものに石膏を流しいれ固めて外したものが、ガラス作品の型になる。
A石膏の内側に入れたい模様を線刻し、そこに色ガラスの粉を象嵌(溝に埋め込む)する。
Bかき氷状にしたガラスの粉を石膏型の内側に貼り付けて厚みを出す。
Cそれを電気窯に入れて焼成するが、途中、蒸気を抜いて再度焼成するなど、温度湿度調整に気を配る。
D焼成後、徐々に冷やしていき、冷めたところで取り出し、水かぬるま湯に漬ける。
E石膏が少し柔らかくなったところで、丁寧にガラスからはがしていき、最後にブラシできれいに取り除く。
Fカップのフチがギザギザなので、それを研磨して滑らかにする。外側も磨く。
この石膏型は一つ一つ壊してしまうので、型は作品の数だけ必要となるし失敗することもある。
・・・と、きっと細かいところではまだまだ工程があるのでしょうが、とにかく手数をかけて作られています。
ハシヅメさんのガラス作品は、カラフルなモザイクの柄のものも魅力があります。
氷砂糖のような半透明な白い地のモノもあれば、クリアな透明地のモノもあります。
モダンでポップなハシヅメさんのガラスの器は、食卓を彩り使っていて楽しくなります。
元教師だったところから一念発起して、金沢の卯辰山工芸工房で学び、
現在では人気作家として活躍されています。
お仕事以外では、以前は金継ぎを、今ではスペイン語を習いに行っているとのこと。
また料理も好きでキッチン中心の家を作るほど。
いろいろな要素があいまって、ハシヅメさんの作品の創造がふくらんでいくのでしょう。
いつお会いしても、全くブレがなく、いつも淡々と彼女の世界観を邁進。
同い年の私がかなりチャランポランに見えるほど、
ハシヅメさんは常に堂々と迷わず制作し続けている姿勢に触発され、衿を正す想いにさせられます。
今会期初日、金沢からかけつけ在廊してくださいます。
作品とともに凛としたハシヅメさんの人となりにもふれていただきたいと思います。
Yumemiさんの帆布づかい
こいのぼりで有名な埼玉県加須市にYumemi(青木美穂)さんを訪ねました。
青木さんの作品との出会いは、数年前、店にいらしたお客さまがもっておられたバッグでした。
ひとめで気に入りました。色がきれいで抽象的なカタチのペイントがあり、オトナのカジュアルバッグ。
よく見ると、帆布でした。
青木さんは、長野出身で、子どもの頃から絵を描くのが好きだったそう。
高校時代の美術部の顧問の先生から影響を大きく受け、美大受験を決めました。
多摩美術大学の絵画科油画を専攻し、毎日絵を描いて描いて描きまくる。
結婚を機に、埼玉に住むようになり、その近所にあった自宅ショップにフラッと立ち寄り衝撃を受けた。
いろいろな工芸の作家の作品を見て、自分でも何か作りたいという気持ちが湧き上がってきたのです。
娘さんの名前『ゆめ』ちゃんと、『美穂』さんを合体して『Yumemi』という作家名で発表しはじめました。
そのうち、大人のためにも何か作ってというリクエストの声が多くなり、
2005年に帆布でバッグを作り始めたのが現在に至るというわけです。
青木さんのバッグには内側に縫い付けられたタグにシリアルナンバーが入っています。
初めてのバッグ作品からずっと連番が打たれているのです。
その記録がアルバムに残されていました。作品の変遷も見えてきます。
当初から現在まで変わらず言えることが、制作のスタイル。
鮮やかな色の帆布は、買った時の色をそのまま使っているのもありますが、基本は染めています。
染め→洗い→色止め→洗いを施し乾燥させます。
各々の作品のパターンにカットし、一つ一つイメージして、アクリルで描きこんだり、ステッチをかけたりします。
手が込んでいるだけではありません。
バッグの地色と装飾との配色やカタチ、切りっぱなしの端処理などがとても小気味よい。
これから紫外線が気になる季節。
今回はバッグやポーチに加えて帽子も作ってもらっています。どうぞお楽しみに!
コラム vol.56 "ハシヅメミツコさんのガラス作品の魅力" "Yumemiさんの帆布づかい"