ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.4 "KarlBlossfeldtの写真""「お茶遊びの会」「お花遊びの会」(佐藤美恵子さん)"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.4 "KarlBlossfeldtの写真""「お茶遊びの会」「お花遊びの会」(佐藤美恵子さん)"

Karl Blossfeldt の写真 「お茶遊びの会」「お花遊びの会」(佐藤美恵子さん)(ギャラリーテン〜コラム vol.4) <2006年4月号>































Karl Blossfeldt の写真

15〜6年前、コムデギャルソンのノベルティのカレンダーをいただきました。
A3サイズくらいの12枚のシートから成っていました。
「これ、キレイ!」と思いました・・・。

ドイツの写真家、カール・ブロッスフェルト(1865-1932)による本物の植物の写真でした。
超ズームのモノクロ写真は、どう見ても彫刻のように思えた。
少し調べてみると、彼は、ベルリン王立芸術工芸大学の教授として彫塑を教えておられたらしいのです。
講座の教材として、植物写真を用いたところ、その写真が反響を呼んだとのこと。

自然の生物って、美しくできているなぁと思うことがあります。

私は、虫、特に細長いイモムシ系がどうしてもダメです。
図鑑の写真であっても触れることも凝視することもできないほどです。
2年前、マンションから今の家に引越してきて、小さいながらもいろんな植物の植わった庭ができました。
虫がいる!ここにもあそこにも {{{{(* ̄д ̄)}}}}
ほうきとちりとりをもって、退治しようとするが、ほうき越しでもさわるのが気持ち悪い。

ある日、恐る恐る、その細長い奴さんを観てみました。
エリック・カールの絵本に出てくる「はらぺこあおむし」も真っ青なくらい、キレイなことに気が付きました。
アクリル絵の具でマットに塗りつけたようなきれいな黄緑色の体に、コンパスで描いたようなまん丸の斑点。
幾何学的でもあり、ポケモンのフィギュアのようなつくりモノにも見えた。
おおげさなようですが、この時ほど自然の姿の美しさに感動したことはありません。
・・・とは言え、10秒以上の凝視はやはり困難なのですが。

鉄の造形作家の松岡信夫さんの作品を見ると、なぜかカール・ブロッスフェルトの植物の写真を思い出します。
作品が有機的なフォルムをしているというだけではない、真髄のどこかに共通点があるのでしょうか。
ウチの門扉を松岡さんに創っていただく時、彼の写真集をお見せし、イメージを伝えました。
毎日開け閉めするたびに触れる門扉の鉄の肌は、手に優しく、そして温かいのです。
植物の息吹さえ感じられるかもしれません。

何かを見たとき、それが自分の好きなものに見えるという感覚は、恋愛感情に似たものがあるようです。
そういう意味では、身のまわりに、好きなモノがひとつあれば、小さな幸せとなるでしょう。
好きなモノがたくさんあれば、大きな幸せに。
ついつい日々の生活に追われる毎日ですが、ちょっとした意識の持ちようで心豊かになれる気がしてきませんか。


「お遊びの会」「お遊びの会」





東京都練馬区のご自宅で三十数年、茶道、華道のお教室をなさっている佐藤美恵子さん。
16年前から、食器、花器の使い方やライフスタイルを提案し、ギャラリー「拾玉」を主宰。
その間、講談社、鎌倉書房、学習研究社などの出版メディアに寄稿。
また、武蔵野調理師専門学校の日本料理科の特別講師、
「テーブルウエア・フェスティバル」でテーブルコーディネートのプロの部にて受賞経歴も。
あらゆる場面でご活躍されています。
そして、3年前から、新しいコンセプトのもと、「お茶遊びの会」、「お花遊びの会」というクラスを始められました。
私はその生徒のうちの一人で、それぞれの会に、春夏秋冬と通っています。

正座ができないし、大して興味もなかったという理由で、お茶やお花とは全く縁のない生活を送ってきました。
でも、ここ数年、歳のせいか(?)そういうことが無性に気になりだしてきたのです。
私が参加している会は、お茶をたてたり、お花を活けたりする作法を習うというよりは、
季節毎のお茶・お花にまつわるしつらえを拝見したり、懐石料理やお酒をいただくという、情緒あふれる空気感に浸れる場なのです。
少しでも学んで、アイデアを盗んでこようと思ってはいるのですが、毎回、「あ〜、楽しかったしおいしかった〜!」で完結。

佐藤さんのお料理やテーブルコーディネートはとても素敵です。
基本を踏襲した上での斬新なセッティングが刺激的です。

花岡隆、黒田泰蔵、末石泰節、赤地健、荒木義隆、星正幸、東直人、ウォーレン・マッケンジー、・・・などの作家もの。
古伊万里、オールドノリタケ、ヘレンド、バカラ、漆・・・などのアンティークなもの。
莫大なバリエーションの器に盛り付けられた旬の食材による懐石は、眼だけでも十分楽しめるすばらしさです。

そんな佐藤さんが、昨年末に、それらを集大成した「明日は御座なく候」という御本を出されました。
とても見ごたえがあり、何度見直しても新しい発見があります。
ギャラリー会期中には、お茶を召し上がっていただきながら、ご覧いただけます。
またご希望の方には、お譲りすることもできますので、お申し付けくださいませ。

私がどれだけ勉強してがんばったところで、佐藤さんの足元にも及ばないのは仕方がないとしても、
彼女が創り出される空気を、胸いっぱい吸い込んで、「感じる」という気持ちはデッカく持ち続けたいと思っています。

コラム vol.4 "Karl Blossfeldt の写真" "「お茶遊びの会」「お花遊びの会」(佐藤美恵子さん)"