ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.46 "飄々・高木浩二さん" "ツボにはまる豊永盛人さんの作品" "自由人・池田忠利さん"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.46 "飄々・高木浩二さん" "ツボにはまる豊永盛人さんの作品" "自由人・池田忠利さん"

<2012年9月号>

飄々・高木浩二さん



高木浩二さんは千葉市にお住まいで、長年行き来してお世話になっています。
高木さんの器は、多くの方に愛されていて、常設展示していても少しずつ買い足していかれる方も少なくありません。
マットな質感ながら滲みない、丈夫、使い勝手がよい、器としての機能性が高い、・・・。
実際に使って良さを実感する器なのでしょう。

いつお会いしても、温厚で紳士な高木さんからは想像のつかないアウトローな一面もあり。
美大に行きたかったがお父さまの反対もあり、慶応大学に進学。
慶応の文学部哲学学科に美学科という専攻があり、ここでお好きな美術に浸る。
学生時代、バックパッカーだった高木さんは、東南アジアや日本国内をヒッチハイクで巡る。
卒業後は就職をしないで、強引に陶芸家・辻村史朗さんの居候になる。
ものを作る人になりたいと思い、現在に至ります。
いつも穏やかなのは、そういうお人柄でもあるのでしょうが、ご自分に正直に自然体で居続けられているからだと思います。

中学生になった一人息子さんとは、「最近、大きくなって一緒に遊ぶ機会が減っておもしろくない。」ともらしておられました。
ご家族にも、周囲の人たちにも、慈愛深く丁寧な人づきあい。
これは高木さんの器づくりにも表れています。
今回、レストランに彼の器をもちこんで食事会をしたいとの私の要望にも、気持ちよく受け入れてくださいました。
高木さんの器はそのものの美だけでない、料理を盛ったときにとてつもない器の良さを発揮することを実感している私のたってのお願いでした。
良さを身をもって体感できる器はなかなかありません。より多くの方に、このことをお伝えしたいと思っています。


ツボにはまる 豊永盛人さんの作品


玩具ロードワークス店内

沖縄に行く機会があれば、絶対、この作者に会いたいと思っていた人が、豊永盛人さん。
ひょうきんでユニークな張子の作品。カードやカルタなども以前から目にしていて気になっていた。
“ヘタウマ”という表現がよいのかわかりませんが、豊永さんの絵の世界は昭和の哀愁が漂う。
この感覚、かなり嗜好のツボにはまります。
日本全国、展覧会のスケジュールでびっしり、沖縄で一番多忙な作家のうちの一人でしょう。

豊永さんは、沖縄生まれ、沖縄育ち、沖縄芸大卒、沖縄在住にて制作という、100%混じりけなしの沖縄人。
那覇市内の繁華街・国際通りの一角に、“玩具ロードワークス”という店を構えています。
こちらに一歩入ると、もう昭和のおもちゃ箱です。
それほど広くない店内ですが、何時間でもいられるほどのワンダーランドです。
愛くるしい張子が所せましと並べられ、木彫作品やオブジェもある。
ユーモラスでマヌケな顔の作品ですが、いつどんな時代も、じっと同じ目線で見据えているようにも見える。
これらの人形に何か癒しの力があるような気さえする。

豊永さん、背がヒョロっと高くて朴訥。好きなことだけ情熱的にやる、やりたいことを躊躇なくやる、そんな印象。
彼の頭の中の世界が少し垣間見えるメルヘン。お楽しみに。


自由人・ 池田忠利さん


アートで埋め尽くされたお宅


膨大な量の美術書

池田忠利さんは真の芸術家だと思う。
今までに数多くの彼の作品を観てきたことからも、彼の言動からも、お宅の中からも、そう感じます。

佐賀ご出身の池田さん、絵を描くのが好きな子供だったそう。
7人兄弟で5人の男子のうちの4男の忠利さん。
15歳年上のご長男の龍雄さんは、幼い頃から利発で絵が抜群に上手で、戦後まもなく上京し、美大に進学。
忠利さんが高校生のころは、すでに、岡本太郎氏や阿部公房氏と活動を共にされ、
前衛画家としてご活躍、有名になられていたお兄さまにあこがれていました。
現在でもなお、NHKの日曜美術館でコメントされていたり、美術館で個展をされているのを時々目にします。

忠利さんも高校卒業後、上京し、デザインの学校に進学。
デザイン会社に就職し、後に独立。神田におられたので、古書、特に工学図書を次から次へと収集。
クライアントから依頼されるデザインの仕事だけではない、ご自分の作品としては平面コラージュがはじまり。
マシナリーな設計図面の切り貼りで、一つの生き物のような造形ができており、ものすごくかっこいい。

そこから少し立体でコラージュしたいと思われた池田さん。
道具の部品や、千葉の外房海岸に落ちている流木や石などが、自由自在に組み合わされる。
各々につけられた作品のタイトルもウィットに富んでいて、プっと吹出してしまうものばかり。
彼の自由な発想は、常に泉のように湧き出しているようです。

池田さんは、一般人も著名人も、とにかくお友達が多い。 人を寄せ付ける要素をたくさん持ち合わせておられるのです。
彼本来のオープンハートな性格と、人懐っこい笑顔と、旺盛な好奇心と、豊富な知識と話題と、研ぎ澄まされた感性。
その“交友”も、彼の芸術を生む源になるとおっしゃいます。奇想天外な作品の数々、ぜひお楽しみください。


コラム vol.46 "飄々・高木浩二さん" "ツボにはまる豊永盛人さんの作品" "自由人・池田忠利さん"