ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.89 "増田良平さんの独創" "豊永盛人さんの独創" "長井さおりさんの独創"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.89 "増田良平さんの独創" "豊永盛人さんの独創" "長井さおりさんの独創"

<2016年4月号>


増田良平さんの独創

一度見たら忘れない、一度ゲットしたらまたほしくなる、なんともユニークな増田良平さんの作品。
増田さんは埼玉出身、沖縄芸術大学に入学以来ずっと沖縄に住み作陶しています。
沖縄は同じ日本とは思えないほど、風景、文化、慣習などあらゆるものが一種独特である。
増田さんは沖縄のそんな環境がとても気に入っていると言う。
そして、植物を愛する増田さん、沖縄のトロピカルな花々から作品へのインスピレーションを受けることが多いのだそう。

作品には細かい絵付けが施されていますが、これは筆で描いたものではありません。
紙をいろんな形のパーツに切って、そこに顔料を塗り貼り付ける。
「描く方が早いのでは?」と尋ねると、切った紙の素朴な線や面でしかできない表現をしたいという答えが返ってきました。
それだけではありません。 絵のモチーフ、色遣い、他の誰にも見られない独創、あふれる遊び心、果敢なる挑戦、・・・・・、なんて楽しいのでしょう。
テンのカフェでもいくつか増田さんの器で提供しているのですが、
「この人を喜ばせたい」「この人を驚かせたい」「この人の笑顔が見たい」と仕掛けるようにお出ししています。
テーブルに置かれた時、「わぁっ!」という歓声が聞こえたらガッツポーズ!うれしいうれしい瞬間です。
そんな器がたくさん勢ぞろいします。 ぜひ「わぁっ!」を体感してくださいね。







豊永盛人さんの独創

生粋の沖縄人・豊永盛人さんが作る琉球張子は、とにかくおもしろい。
ユーモラスというかナンセンスというかシュールというかシニカルというかアヴァンギャルドというか・・・・・、人の心をとらえてはなさない大きな魅力があります。
子どもがそのまま大人になったような人と言えば簡単ですが、とぼけた表情の作品からはなにやら突き抜けた知性さえ感じられるほど、
ひとつの作品に込められたコンセプトが存在します。

今企画展は、豊永さん・増田さん・長井さんの沖縄芸術大学時代から息の合った3人で何をやりたいかを徹底的に練られて生まれたものです。
また、豊永さんと主催者の私の間でも、お互い意見をぶつけ合い、歩み寄り、反論し、賛同し、・・・、ようやく今展にこぎつけることとなりました。
豊永作品は、そこから受けるユル〜くて楽しいイメージから計り知れない、実は彼自身がものづくりをつきつめたプロの仕事なのだと確信しました。

それにしてもおどけたヘタウマな絵には、胸の奥がほんわりと温かくなり自然とゲンキになっていく不思議な力があります。
ププっと笑いがこみあげてくる豊永作品が人を幸せにするのです。
手に取ると軽くて丸くてサラっとしていて優しい気持ちになります。
この豊かな表現を見て触って感じていただきたいと思います。

今展『レッツゴー春夏秋冬』では、豊永さんは『春』と『冬』、増田さんは『秋』、長井さんは『夏』をテーマに制作されています。
どうぞご高覧ください。







長井さおりさんの独創

沖縄芸術大学の染色を専攻し、卒業後数年は沖縄で制作をしていましたが、現在は生まれ育った神戸に在住の長井さおりさん。
家業のお惣菜屋さんを継いでいます。

今展での『夏』担当のさおりさんからは鯉のぼりをモチーフとした作品がたくさん出展されます。
独自のキュートで色彩豊かな絵柄に惹かれます。
今回、5歳の娘さんとコラボでロウケツ染めにて制作されました。
「子どもの自由な発想はまさしく空を飛びます。
 空を宙を、どこをどこかを。
 自分がとらわれていたものも全て軽々とクリアにしてくれました。」さおりさん談。

男の子の節句と限定するのにはもったいないほどの魅力あふれる作品。
ほのぼのとした鯉が元気よく気持ちよさげに泳いでいるさまが生き生きと表現されています。
ぜひ“さおりワールド”をお楽しみください。







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