ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.61 "鳥山玲子さんの“つくる”精神" "自然界からの使者・栗城三起子さん" "黒澤洋行さんのものづくりの原点"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.61 "鳥山玲子さんの“つくる”精神" "自然界からの使者・栗城三起子さん" "黒澤洋行さんのものづくりの原点"

<2013年12月号>

鳥山玲子さんの“つくる”精神

茨城県つくばにあるMEMORIES。
カフェ・ギャラリーとジュエリーショップの二棟が整然と建つ。
そのオーナーでジュエリーデザイナーの鳥山玲子さんの“つくる”ことに対しての哲学が一貫されている。

料理や裁縫など手仕事が好きな玲子さんが彫金に出会い、40年前にジュエリー作家として始動。
玲子さんのジュエリー作家としての出発点でのコンセプトがしっかりと固まっていました。
一生懸命制作したものをどのように世に出すかを考えたのだそう。
個展などでアーティスティックなものを発表するのではなく、
まず小さくとも店を構え、そこで『よいものを日常的にふだん使いして楽しめるジュエリー』を提案したいと。
暮らしの一部として、彫金し、作品を身近に置き、お客様と対面し対話し自然体で作品を感じていただく。
また彫刻家のご主人・豊さんがいろいろなモチーフを造形し型を起こした合作のジュエリーも生まれました。

日々の暮らしの中で目にする自然界のあらゆるものの有機的な美からインスピレーションを受け、ジュエリーのデザインをする。
このことは、もちろん彼女の作品を見ればわかることですが、カフェやショップのあり方を見ても納得できます。
どこかの林や庭で切ってきた枝ものが生けられ、壁に植物の実や葉や枝の断片が飾られ、何かきもちのよい空気が流れているのです。
玲子さんは『自分の目の前の幸せを発見できる人こそが幸せ』だとおっしゃいます。
彫金教室を開き、カフェを開き、一作家として日常的に社会との接点をしっかりと持つ。
ずっとずっと永く変わらずそこにあるという確信のもてる、地に足のついた玲子さんが作るジュエリーを楽しんでいただきたいと思います。




自然界からの使者・栗城三起子さん

福島県会津で生まれ育った栗城三起子さんは、その自然に囲まれ感受してきた多くのことが
今なお鮮烈に体にしみこんでいて、
彼女の遊び場だった“森”が母であり彼女の創作の核だとおっしゃいます。
彼女自身がその森にいる小人になった気分で、いつも植物に
接しているように見えます。
『自然の動きと形をいただいて
 自分が風のような気持ちになって作る。』
三起子さんのリースやブーケやスワッグなどの創作の心構え
である。
そこに意図はなく、自分を出さず、どうにかしてやろうと思わず、
頭の中をゼロにして、とにかく自然そのままの状態を受けとめて
もっと美しくなるように作る。
ありのままの自然を享受して、ありのままの美しさを手を加えて表現することが
彼女の感性と技術の素晴らしさなのです。魔法のようです。

三起子さんの口からたびたび出てくる“神様”というワード。
特に何かの宗教に心酔しているのではなく、最高水準の魂をもった
宇宙の自然界に存在するものを指す。
その神様にいつも感謝し、それらに触れていることに喜びを覚える。
土の上で成長してきた植物の一部を切り花としてイキイキとした姿を愛で、
その後、ドライにしてまた植物の美しく変化するさまを楽しむ。
朽ちていく詫びた姿にも美を感じ、最後は土に還す。
三起子さんのブログなどで見られる文章や、話をしていて口から出る
言葉の数々によって、情緒豊かな詩的な表現が次々と
発せられるのにはいつも感心しきり。
多くの偉人の生き方や思考を膨大な数の読書から様々な精神性を
体に入れ、波乱万丈の人生をその精神性と自然への感謝によって、
次々と前向きに立ち向かっていく彼女の凛とした姿がある。
三起子さんはもしかすると自然界からの使者である妖精なのかも
しれません。



黒澤洋行さんのものづくりの原点

千葉県茂原にアトリエを持つ黒澤洋行さん。
東京出身で、好きなバイクのシートを張り替えようと近所にあった
革雑貨の店に行ったのが、今の革作家としての原点。
おもしろそうだと思ったら、ちょうどスタッフを募集していてそこに入り、
革作品の技術を学ぶ。
そこは男性用のハードな革ものを扱っていた店でしたが、
当時結婚したばかりの由美子さんに手づくりの革のバッグをプレゼントし、
とても喜ばれた。
その時、独立して女性に使ってもらえるようなバッグの作り手になろうと決心。
即決で退職。
それから地道にバッグを作る中、生まれてきたご長女のためのファーストシューズを
作ってみた。
そのベビーシューズこそが、現在のKUROSAWA作品を象徴するものの一つと
なっています。
ある日、ベビーシューズをお友達の出産祝いにと買った方があり、その贈られた方が
とても喜ばれたそう。
その贈られた方がまた他の方によさを伝え、思わぬ展開へとつながっていく。

人がどこでどんな出会いや縁に恵まれるのかは、偶然のような必然のような
不思議な赤い糸で引き寄せられて生まれるのだと思います。
改めて見直していくと、黒澤さんの今の創作は愛する家族のために心をこめて贈った
ことから始まり、その想いがつまった美しく優しい作品が、他の人にも共感を呼び支持されて
きたのです。
また、黒澤さんの作品に登場する動物や昆虫などのモチーフは、リアルだけど図案的で
甘くないかわいらしさが魅力。
バッグやポーチなどの雑貨も、デザインは至ってシンプルで軽くて頑丈。
独立して若干5年ですが、KUROSAWA作品の人の心に届く柔らかい温かさがどんどん波及してきているのを実感します。
今回、バッグ、ベビーシューズ、ポーチ、財布、手帳など、いろいろなアイテムを展開します。お楽しみに。


コラム vol.61 "鳥山玲子さんの“つくる”精神" "自然界からの使者・栗城三起子さん" "黒澤洋行さんのものづくりの原点"