高橋朋子さんと磁器
高橋朋子さんとは10年来の友人。
千葉県八街にあるアトリエで作陶し、全国各地のギャラリーで作品を発表しています。
北海道札幌で生まれ育ち、沖縄芸術大学に進学。日本列島の北から南へ。
たくさんのカルチャーショックがありました。
開拓の歴史のある県(道?)民性でしょうか、合理的かつ真面目で忍耐力・持久力に優れている。
沖縄の温暖な気候もあいまって、自由でのんびりしていて楽天的。
細かいことを考えずにおおらかに過ごすという沖縄の空気が朋子さんを気楽にさせてくれました。
芸大では陶芸を専攻し、釉薬の研究をしたりオブジェを作ったり、いろいろなことを学ぶも何か物足らない気持ちもあった。
大学院に進んで出会った先生が、磁器を作ってみないかと提案してくださったことが
今の朋子さんの根っこに流れるもののきっかけになった。
陶器は“土もの”、磁器は“石もの”と呼ばれますが、磁土は繊細で扱いが難しい。
でもその磁土のきめ細かい肌の魅力は絶大なものがあり、朋子さんが「コレだ!」と運命を感じたのでした。
たとえば、金箔や銀箔を美しい幾何学模様に配したり、
真っ白の素地に呉須をストローで吹きかけ爽やかな青の水玉を浮かべたり、
ニスによるマスキングでシャープな輪郭を出したり、
銀彩やプラチナ彩を施し洗練された雰囲気を醸し出したり、
女性ならではのソフトでキュートな感覚が息づいています。
以前、2年間ほど朋子さんと私は一緒にお茶のお稽古に通っていました。
茶道は全ての道に通じており、作家の朋子さんやギャラリー店主の私にとって学びの多い奥深い世界。
二人とも忙しくなり通えなくなってしまいましたが、
朋子さん、最近では展覧会とお茶会がコラボしたものも積極的に展開しています。
また私もお茶にまつわる季節のしつらいや懐石、道具などをもっと探究していきたい。
今後も朋子さんと私は違う立場ながら、工芸という共通のテーマと友情でお互い向上していきたいと思います。
齋藤龍也さんの“susuri”
“susuri(ススリ)”は“サラサラと音がしている”という意味のエスペラント語。
音の響きやその意味が、デザイナー・齋藤龍也さんご自身と彼の作る服のイメージにピタっときます。
齋藤さんの第一印象をひとことで言うなら、“透明感”。
端整な顔だちとスッと伸びた背で、susuri の服がまるで彼のためにあるように感じました。
その隣で、プレスで奥様の愛さん、高校生とも大学生ともとれる童顔の彼女もまた、
susuri の服がまるで彼女のためにあるように感じたのです。
シンプルでありながらもシルエットやディテールにこだわりがあり、
その服に体を通した人の独自の雰囲気を作り出してしまう包容力と独創性を確信します。
susuri の服づくりのコンセプトは、
『日常は、羞じらいや緊張、可笑しさや軋みなど、曖昧な気分を見つける
小さな旅の繰り返しです。そんな不確かで不均衡な日々の気分を、
男らしい、女らしい、という感覚に捕われず、時代や物語のイメージを
重ねて衣服として表現します。』
そのことからもわかるように、susuri の服はユニセックス。
単に男性でも女性でも着られるということではなく、双方の要素を取り入れて、サイズやパターンを変え、
また着る人がどんなふうに着こなしたいかでそれらを自由に選択し服を楽しむということの提案です。
おもしろいとか学びたいとか明確な自分の指針がなく過ごしていた齋藤さん、
夜間に服飾の専門学校に通ったと伺い、 大学に行きながら他の学校にも通うというほど服づくりに情熱を持ったのだと思いました。
でも、それはただ漠然と服というモノが好きだったからとおっしゃいます。
結局、大学は中退し、専門学校を修了し、アパレルメーカーの企画に携わりました。
仕事に忙殺され心身ともに疲れてしまったある時、
思い切って独立して自分の着たい服を気ままに作ってみようと思い立ち、2年前“susuri”を立ち上げました。
毎シーズンのデザインに掲げるテーマは絵本やシーン。
susuri の服は、着る人の嗜好を物語るアイデンティティの証となっていくのです。
今回、アーカイブや定番の服を展示販売、2014年秋冬ものの受注会を展開いたします。 ご高覧ください。
コラム vol.66 "高橋朋子さんと磁器" "齋藤龍也さんの“susuri”"