![純朴な関昌生さん ナチュラル・古橋真理子さん(ギャラリーテン〜コラム vol.28)](../parts/allecolle28.gif)
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純朴な関昌生さん
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「四月の魚」店内
私が福岡に足を踏み入れたのは生まれて初めて。
博多・天神界隈にはおもしろいお店が密集していて、まるで東京の青山と新宿が一緒になったよう。
古道具屋さんが多いのにも驚きました。
福岡県うきは市にある関昌生さんが営まれている古道具店「四月の魚」を訪ねました。
元は昭和初期の歯科医院だった建物に、関さんのチョイスされた古道具や作家モノがしっくりおさまっている。
このお店はもう20年以上続いているそうです。
なんとなく古道具屋がおもしろそうだったから始められたとのこと。
やっているうちに古道具の魅力に引き込まれたのだとか。
ここ何年か前から、店番をしながら、たくさんあったワイヤーをペンチで曲げたりしながらモノをつくりはじめられました。
それをおもしろいという方が現れ、展覧会をし、それがどんどん波及し、今や、古道具店主でもありワイヤー作家でもある。
関さんのワイヤー作品は数年前からなんとなく気になっていましたが、その意識が頭の隅で眠っていました。
昨年春、千葉にある「as it is」(坂田和實さんの美術館)で衝撃的な出会いがありました。
そのとき、坂田敏子さんの企画展示をされていたのですが、彼女のコレクションのうちの一つが和室に凛と置かれてありました。
直線の2〜3センチくらいの細い針金がランダムに編まれたボウル。(今回の表紙の写真と同じタイプのもの)
繊細で美しく、一目で、ハートを打ちぬかれてしまいました。
それが、関さんの作品だったのです。
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「わぁ、器用だ!」
ペンチを器用に駆使し、みるみる間にカタチができる。
単純な線を折り曲げ折り曲げ、ストーリーさえ感じられる親しみのあるカタチがうまれる。
しかも超シンプルで感度が高い。
男性である関さんが作られているからか、甘すぎないテイストの遊び心が妙にかわいらしくもある。
思わず笑ってしまったのが、関さんが描いてくださったお店周辺のおすすめスポットの地図。
地図上の線が、関さんの作られるワイヤーの作品が平面になったかのようにカキカキっとしている。
生まれも育ちも福岡の関さんの話口調が、シャイで丁寧で柔らかくて優しい方言で心地よい。
乗っておられるお車も、イタリアFIAT社の「panda」。
ご本人、お店、作品、車のイメージが、あまりにもぴったり合っている。
ゆるさと几帳面さのバランスがとてもよいと思いました。
オブジェのようなおもちゃのような、目の前にあるだけで、「いいなぁ」とほっこりするような作品。
バリエーション豊かに登場します。
ぜひ実物を観ていただきたいと思っています。お楽しみに!
ナチュラル・古橋真理子さん
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紡いだ糸で編んだものが左
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真理子作品の設計図である編み図
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糸を紡いでいるところ
やきものの町・栃木県益子に、古橋真理子さんのアトリエを訪ねました。
ウールやコットン、リネンの糸で、真理子さんオリジナルの編み物ができる。
しかも、「紡ぐ」という作業を経て。
市販の毛糸と、原毛から紡いだ糸で、少しだけ編んでいただいたものを比較してみました。
歴然とした違いが素人眼にもすぐわかりました。
同じウールでも、温かみや厚み、手触り、風合い、弾力、空気の抱き加減が全く異なる。
手をかけて作り出されるものへの感謝の気持ちが自然と沸いてくることを実感します。
そして、真理子さんの編み上げたものは、何の変哲もなくシンプルで謙虚で安心感がある。
ナチュラルで飾り気がなく、物静かながらゆるぎない芯を持っている真理子さんの化身のよう。
先日、ジェームズ・キャメロン監督の“AVATAR”という映画を観て、とても感銘を受けました。
「アバター」とは、コンピューターネットワーク上でのバーチャルな自分の分身。
この映画では、情報技術とは対極のプリミティブでピュアな絆がテーマの一つになっています。
真理子さんのたくさんの作品は、まさに彼女の分身としてのキャラクターが表現されていて、
それらと関わることでモノの本質に触れ、心の充足感を伴う。
作品が私たちの胸の奥にリンクしてくるのです。
益子のギャラリー・カフェ「STARNET」で仕事をしていた真理子さんが、
そこで建築に携わっておられたご主人・治人さんと出会ったそう。
現在、建築設計、インテリアの仕事とともに、木工作家としての展覧会もされています。
今では真理子さんは作家活動に没頭されていますが、
真理子さんのライフスタイルやご本人は、STARNETから抜け出したかのよう。
糸を紡いで、デザインを考え、それを地道に編むという手の仕事は、気の遠くなる作業です。
常に着実に真面目に作品に取り組む姿勢が、清々しく美しいと思いました。
今回、簡単な方法で、糸を紡ぐワークショップを開催します。
ひたすらに糸を紡ぐという体験とともに、真理子さんの人となりに触れることで、
作品の魅力により寄り添える体感もできるでしょう。
コラム vol.28 "純朴な関昌生さん" "ナチュラル・古橋真理子さん"